研究実績の概要 |
ゼスレン骨格の大量合成法の開発を目指して、入手容易な市販品1,2-dihydroacenaphthyleneを用いた合成手法の開拓を行った。これまでの経緯を鑑み、有機溶媒に対する溶解度を高めた4,7-di-tert-butyl-1,2-dihydroacenaphthyleneを基盤物質に据えた。合成戦略として大きく3つに分けて行った。一つ目は、4,7-di-tert-butyl-1-(phenylsulfonyl)acenaphthyleneを求電子剤として用い二量化を目指す手法であるが、良い求核剤を見つけるに至らなかった。二つ目は4,7-di-tert-butyl-2-(trimethylsilyl)acenaphthylen-1-yl trifluoromethanesulfonateを用いてベンザインを発生させその二量化を狙う手法であるが、中間体である新規物質4,7-di-tert-butyl-2-(trimethylsilyl)acenaphthylen-1(2H)-oneの大量調製が困難であることがわかり、ベンザイン前駆体を得られなかった。三つ目は1,2-dibromo-4,7-di-tert-butylacenaphthyleneを用いてベンザインを発生させ、その二量化を狙う手法である。ベンザイン前駆体である、有機溶媒に問題なく溶ける新規なジブロモ体については大量調製することができた。そのジブロモ化体の一つの臭素をフェニルスルフィドに、もう一つの臭素をトリメチルシリル基に変換し、これをフッ素イオン添加条件下アセナフチンに変換することを試みた。結果、確実にビニルアニオンが発生していることがわかり、酸性度の制御によるアセナフチン発生研究の端緒を拓くことができた。
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