研究実績の概要 |
種々の置換ビピリジンを配位子とするジメチルアリール白金-マンガン二核錯体(4,4'-R2bpy)Me2(p-XC6H4)Pt-Mn(CO)5 (R = tBu, X = H (1a), OMe (1b), F (1c); R = OMe, X = H (2a); R = CO2Me, X = H (3a))の可視光照射下でのメチル基移動反応における量子収率を求めた。これらの錯体のHOMOである白金-マンガン結合間からLUMOであるビピリジン上のπ*への電子遷移に対応する極大吸収波長付近の可視光を照射した場合にメチル基移動反応が最も促進される。そこで、各錯体に関して極大吸収波長付近の可視光、すなわち、3aについては650 nm、それ以外の錯体については530 nmの可視光の照射下で反応を行い、量子収率を求めた。その結果、ビピリジン環上の置換基やアリール基上の置換基による量子収率への影響はほとんどないことが明らかとなった。これらの結果は、二核錯体の光反応において、メチル基移動反応の律速段階が、光により生成する励起種からの有機基移動段階ではなく、励起種を生成する吸光段階であることを示唆する結果であると考えられる。一方、トリメチル白金-マンガン二核錯体は、ジメチルフェニル白金-マンガン二核錯体と同等の極大吸収波長をもつにもかかわらず可視光照射によるメチル基移動反応が促進効果は観測されなかった。これらの結果により可視光照射下でのメチル基移動反応は、二核錯体のHOMOである白金-マンガン結合からLUMOである置換ビピリジンへの電子遷移により生成する励起種を経て進行し、白金中心がより酸化されている状態が必要であると考えられる。
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