研究概要 |
平成24年度は、(1) 光増感部位の改良および (2) 基質適用範囲の調査の2点について検討した。これまで、(1)についてはルテニウムポリピリジルユニット [(bpy)2Ru(bpm)]2+ を主に用いてきた。別の触媒反応系において光増感ユニットは、その触媒活性に大きな影響を与えることを見出しているので、置換基を導入した光増感ユニット [(bpyR)2Ru(bpmX)]2+ (R = Me, X = H, Br) を持つPd―アセテート錯体類縁体を合成し、反応性を調査したところ、いずれの置換基R, X ともにHのものが最も高活性であることが分かったため、以後はこの無置換ルテニウムポリピリジルユニットを有するPd触媒を用いることにした。(2) について基質適用範囲を広げるために、C-H活性化を受ける芳香族側の基質を変えて反応性を調査した。これまで、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)との反応で、高選択的にシンナミル基とカップリングした生成物が得られることを見出してきた。ベンゼン、トルエン、n-プロピルベンゼン、キシレン、と反応させたところ、クロスカップリング生成物は全く得られず、シンナミルアセテートのホモカップリングのみが進行した。メチル基の数を増加させ、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(デュレン)の場合は反応が進行したことから、この反応が求電子的な反応であることが分かった。 これらの結果を踏まえ、様々な対照実験を進めた。この反応はニトロメタン中、Ru-Pd二核錯体を触媒として用いるが、パラジウムアセテート単核錯体や、これにビピリジル配位子、銀塩を加えても反応は進行せず、二核骨格+光照射がこの反応の進行に不可欠であることが分かった。
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