研究実績の概要 |
平成26年度は、光増感ユニットの励起寿命と反応活性について他の系の結果を合わせて比較した。特に紫外光増感性クロモフォアを組み合わせたバイクロモフォアは、単一のクロモフォア(ユニクロモフォア)を持つものに比べて10倍以上の長い励起寿命を持つことが知られている。我々はナフチル基を直接ルテニウム(II) ジイミンユニットと連結したクロモフォアが、単一のものに比べて約10倍 (1マイクロ秒) に伸長し、また、ルテニウム(II) ジイミンユニットからイリジウム(III) シクロメタレート型に変更するとさらにその4倍程度(計40倍)もの寿命伸長効果があることを明らかにした。実際にバイクロモフォアユニットをパラジウム錯体に導入することによって合成した錯体は、ユニクロモフォアを持つそれと比べて、光触媒活性が大きく向上することがわかった。このように、励起寿命が活性に影響する理由を調べるために、共同研究によってバイクロモフォアイリジウム錯体の時間分解分光測定を行ったところ、3種類もの寿命成分が存在することがわかり、最も短寿命のものが3MLCT である結果が示唆された。このような複数の励起種が存在する理由として、分子の異方性が挙げられ、代表的な[Ir(ppy)3] (ppy = 2-phenylpyridine) のような対称的な錯体は、単一の励起種を与えるのに対して、[Ir(ppy)2(bpm)]+ (bpm = 2,2’-bipyrimidine) や、われわれが合成した [Ir(ppynaph)2(bpm)]+ 錯体は複数の励起種を持つことが明らかとなった。
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