本研究では、新たな銅(I)、銀(I)発光性錯体の開発に併せ、複合化による銅(I)、銀(I)錯体の高機能化を行う。具体的にはチオラト配位子を用いた新規発光性錯体の合成とこれまで得られた強発光性錯体の複合化を検討する。 本年度は、強発光性錯体の複合化について主に検討した。前年度までに、大きさの近い配位子を用いると、同形混晶として複合型の発光性錯体を合成できることを示し、ピラジンーアミノピラジン混合錯体、ビスピリジルエタン―ビスピリジルエチレン混合錯体、ビピペリジン―ビピリジン混合錯体を合成した。まず、これらの錯体の発光挙動の検討を行った。また、架橋配位子の比率の決定についても詳しく検討した。これらの配位高分子が、ジメチルスルホキシド中で150度程度まで加熱すると分解することを見出し、この分解液のガスクロマトグラムを測定することにより、配位子の比率決定を行った。その結果、配位子の組合せにより、反応比とほぼ同じ比率で錯体中に取り込まれる場合と、反応当量比より大きく外れた比率で取り込まれる系があることを明らかとした。 期間全体では、銅(I)チオラト錯体として最初の例であるホスフィン及びピリジン系配位子を持つ発光性錯体を合成し、その発光が対応するハロゲノ錯体と同じく銅チオラト骨格部分からピリジン系配位子への電荷移動遷移であることを示した。これにより、チオラト錯体の発光性もピリジン系配位子の選択により制御できることを明らかにした。複合系錯体に関しては、これまでの混合金属錯体、混合ハロゲノ錯体に加え、同形混晶形成を利用して架橋配位子混合型の錯体が合成できることを示した。また、サイズの異なる架橋配位子を用いると、異形混晶として混合配位子型の錯体が生成することも示した。混合比による影響も検討し、これらの混合配位子型の錯体でエネルギー集約挙動がみられることも明らかにした。
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