研究課題/領域番号 |
24550074
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
植村 一広 岐阜大学, 工学部, 助教 (60386638)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 一次元鎖 / 多核錯体 / 金属結合 / 混合原子価 / スピン |
研究概要 |
本研究では、白金-異種金属結合を利用して、不対スピンを有する混合原子価一次元錯体の合成を目的としている。また、レドックス活性配位子を導入することで、光に応答した電荷分布スイッチングを目指している。平成24年度は、以下の3つについて、実験を進めた。 1. アミド基の酸素原子が配位フリーな、白金単核錯体のcis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]とRuCl3を、メタノール中で混合し、乾固後、水中で過剰量のKClと攪拌することで、茶色粉末を得た。1H NMRとESI-MSの結果、この茶色粉末は、[PtRuCl3(NH3)2(NHCOtBu)2]の複核錯体とわかった。 2. 既に合成に成功している白金-ロジウム複核錯体に、3,5-ジ-tert-ブチルカテコール導入の為、エカトリアル位の塩化物イオンの除去を検討した。水-有機溶媒中で、過剰量のAgNO3を加えたところ、AgClと思われる白色粉末が得られたが、ESI-MSの結果、複核構造が崩壊し、完全な除去はできなかった。一方、PPh3を加えると、PPh3がRhに配位し、複核構造を安定化することがわかった。ここに、過剰量のAgNO3を加えると、塩化物イオンが完全に除去された化合物を得ることができた。 3. [PtCl2(bpy)](bpy = 2,2’-ビピリジン)から、ピバルアミダート架橋白金複核錯体の[Pt2(bpy)2(NHCOtBu)2](PF6)2を得た。これと酢酸ロジウムを、アセトン-エタノール溶媒中、2:1で混合し、その溶液をゆっくり蒸発させることで、緑色金属光沢をもつ赤色単結晶を得た。単結晶X線構造解析の結果、Pt-Pt-Rh-Rh-Pt-Ptと並んだ、一次元状六核錯体であることがわかった。白金間距離が顕著に短くなっており、bpyのπ-π相互作用が効いていると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、直接の金属結合を有する白金-ルテニウム複核錯体のルテニウム部位に、レドックス活性配位子であるカテコールを導入した複核錯体の合成を目指していた。白金単核錯体のcis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]とRuCl3から、複核錯体の合成はできていると考えられるが、カテコールの導入までには至っていない。その理由は、白金-ルテニウム複核錯体の単結晶化ができておらず、単結晶X線構造解析で分子構造を確認できていないためである。確認は、質量分析のみで実施しており、白金とルテニウムともに多様な酸化状態をとりうるため、系中に複数種の錯体が存在すると考えられる。一方、白金-ロジウム複核錯体では、単結晶化が進んでおり、カテコールの導入以前までの分子構造を、単結晶X線構造解析で確認できている。また、[Pt2(bpy)2(NHCOtBu)2]と酢酸ロジウムから、一次元状六核錯体の合成に成功しており、非架橋白金-異種金属結合の生成を確認するとともに、電子構造制御を指向した一連のアプローチが、確かであることを見出している。
|
今後の研究の推進方策 |
目的物である、カテコールがルテニウムに配位した白金-ルテニウム複核錯体の合成を、引き続き進めていく。その際、溶媒や温度を最適化する。また、前駆体となる白金単核錯体の配位子を調整して、同様に複核錯体を合成する。質量分析の結果、複核構造は確かに形成しているが、単結晶化が難しい。この原因として、金属上の電荷が揺らいでいることと、アキシャル位配位子の解離平衡が考えられる。そこで、酸化剤もしくは還元剤を加えて複核錯体の電荷を一律にする、アキシャル位に配位していると考えられる塩化物イオンを過剰に加えるなどして、複核構造を一義的にする。また、白金-ロジウム複核錯体でも、同様にカテコールの導入を検討する。さらに、酢酸ルテニウムと白金錯体との非架橋金属結合の生成や、ルテニウム以外の常磁性金属種でも一次元鎖化の検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|