研究課題/領域番号 |
24550074
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
植村 一広 岐阜大学, 工学部, 助教 (60386638)
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キーワード | 一次元鎖 / 多核錯体 / 金属結合 / 混合原子価 / スピン |
研究概要 |
平成25年度は、以下の3つについて、実験を進めた。 1. cis-[Pt(en)(NHCOtBu)2]とRuCl3の複核化を検討した。種々の溶媒を用いた結果、メタノール、アセトン、アセトニトリルで、良好に複核化が進行していることをESI-MSで確認した。特に、アセトニトリル中で合成したものを乾固し、CVを測定すると、0.5-2.0 V(vs. SCE)に、3つの可逆な酸化還元波がみられた。これらの酸化還元波は、原料には見られず、白金-ルテニウム複核錯体由来のものと考えられ、3種類の化合物が混在していると考えられる。また、反応溶液に過酸化水素水を加えて、酸化を促進したのちESI-MS測定をすると、白金-ルテニウム複核錯体由来のピークが大きく現れた。 2. 白金-ロジウム複核錯体の[PtRhCl3(en)(NHCOtBu)2]と6等量のAgNO3を、アセトニトリル中で遮光攪拌することで、複核構造を維持したままで、塩化物イオンの除去に成功した。ここに、2,2’-ビピリジン(bpy)を加えると、bpyがキレート配位した[PtRh(bpy)(en)(NHCOtBu)2(NO3)]となり、単結晶X線構造解析で確認した。また、アセトニトリル中で3,5-ジ-tert-ブチルカテコールを加えて、乾固精製すると、セミキノン状態で配位した複核錯体であることを、ESI-MS、ESR、IRで確認した。そのCVは、E1/2 = -0.33、0.31 V(vs. Fc/Fc+)の2段階の可逆な酸化還元波がみられ、複核錯体内の配位子が、キノン、セミキノン、カテコラートと酸化還元していることが考えられる。 3. 異種金属結合を利用して、白金-銅三核錯体と酢酸ロジウムが交互に並んだ、常磁性の一次元鎖錯体を合成できた。ESR測定から、不対スピンが銅のdx2-y2軌道上に存在することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度も、直接の金属結合を有する白金-ルテニウム複核錯体のルテニウム部位に、レドックス活性配位子であるカテコールを導入した複核錯体の合成を目指していた。白金単核錯体を、cis-[Pt(NH3)2(NHCOtBu)2]からcis-[Pt(en)(NHCOtBu)2]へと補助配位子を替えたところ、複核化が安定に進行することがわかった。ただし、単結晶X線構造解析で分子構造を確認できていない。一方、白金-ロジウム複核錯体では、カテコラート配位子の導入に成功している。単結晶X線構造解析で分子構造は確認できていないものの、質量分析から目的化合物由来のピークが確認できていること、サイクリックボルタンメトリーで2段階の可逆な酸化還元波を確認している。本来なら、ルテニウムにレドックス活性配位子を導入したいところだが、ロジウムできていることから、ルテニウムでも同様に合成可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
目的物である、カテコールがルテニウムに配位した白金-ルテニウム複核錯体の合成を、引き続き進めていく。まず、白金-ルテニウム複核錯体の分子構造を単結晶X線構造解析で明らかにする。今のところ、単結晶が得られていないのは、溶液中で金属上の電荷が揺らいでいることと、アキシャル位配位子の解離平衡が原因として考えられる。酸化剤として過酸化水素水を加えたところ、該当のESI-MSのピーク強度が増大したところから、一度酸化させて後、単離することを目指す。その際、溶媒や温度、濃度、塩の添加を最適化する。また、白金-ロジウム複核錯体では、カテコールの導入に成功しているので、こちらでも単結晶を得ることを目指す。また、カテコラート配位子を替えて、合成の検討を行う。また、異種金属結合を利用した一次元鎖錯体の合成は、様々なロジウム複核錯体と白金複核錯体を用いて、引き続き実施していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として計上した、金属錯体の合成に必要な貴金属試薬、溶媒は、前年度より引き続き使用しているものもあり、今年度は、追加購入が必要なかったため。 引き続き、金属錯体合成を行っていくため、貴金属試薬や溶媒類の購入を予定している。また、合成の同定のために、低温下で各種測定できる付属品の物品購入を予定している。さらに、研究成果発表のための旅費も予定している。
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