平成26年度は、以下の3つについて、実験を進めた。 1. 昨年度までに見出した、cis-[Pt(en)(NHCOtBu)2]とRuCl3との複核化の反応について、ルテニウムの反応原料を変え、2価の酸化状態をもつ[RuCl2(COD)]および[RuCl2(DMSO)4]で検討した。cis-[Pt(en)(NHCOtBu)2]とアセトン中で混合し、ESI-MS測定をすると、m/z = 663および749に複核化のピークを確認できた。3価のルテニウムでは、強度の弱いピークしか確認できず、2価の方がPt(+2)と結合しやすいことが示唆された。 2. 白金-ロジウム複核錯体の[PtRhCl3(en)(NHCOtBu)2]から塩化物イオンを除去し、H2O中で過剰量のKBrを加えて、臭化物体の[PtRhBr3(piam)2(en)]を得た。MeOH中、3当量のKI水溶液をゆっくり拡散させて、ヨウ化物体の[PtRhI3(piam)2(en)]を得た。塩化物体を含めた3つの化合物のCVをCH3CN中で測定した。いずれの化合物で、3つの準可逆な酸化還元波がみられ、配位ハロゲンがCH3CNと置換した3種類の化合物における、δ*軌道の1電子酸化還元と考えられる。酸化還元電位は、塩化物体、臭化物体、ヨウ化物体の順に、低電位側にシフトした。CH3CN中での紫外可視吸収スペクトルでは、σ→σ*とπ*→σ*遷移と考えられる吸収が、塩化物体、臭化物体、ヨウ化物体の順にレッドシフトし、配位ハロゲンによって電子構造が顕著に変化することがわかった。 3. 金属結合を介し、白金複核錯体とアミダート架橋ランタン型ロジウム錯体が交互に並んだ一次元鎖錯体の合成と、単結晶X線構造解析に成功した。この白金複核錯体を、非架橋金属結合した2つの白金単核錯体で置き換え、同様の並びをもつ一次元鎖錯体の合成と単離にも成功した。
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