研究概要 |
本研究では,発光をプローブとして金属間相互作用を系統的に理解するために,様々な混合金属錯体を開発している。昨年度,ビピリジンおよびその誘導体がキレート配位した白金ユニットを含むZ型混合金属錯体 [Pt2M2(L)2(μ-3-tBupz)4](PF6)2 (L = bpy, 5,5'-dmbpy, 4,4'-dmbpy; M = Ag, Au, Cu)を合成し,発光特性を詳細に調べた。ビピリジンおよびその誘導体をキレート配位子として用いた場合には,生成する混合金属錯体は正電荷を帯びる。25年度は,フェニルピリジンがシクロメタル化した白金ユニットと架橋配位子として3,5-ジメチルピラゾールを用いることにより,分子性の混合金属錯体を合成した。そして,この混合金属錯体における配位子場強度の増大と電荷の減少が,発光特性にどのような影響を与えるか調べた。その結果,導入する11族の金属イオンとしてAg+を用いた場合には3-t-ブチルピラゾールを用いた場合と同様にZ型Pt2Ag2錯体が得られたが,Au+イオンを用いた場合には,PtAu2錯体が生成することが分かった。Pt2Ag2錯体の発光エネルギーを比較すると,分子性錯体の方がカチオン性錯体よりも低エネルギーの発光を示し,キレート配位子が,4,4'-dmbpy ~ bpy > dfppy (2-(2,4-difluorophenyl)pyridine) > ppy(2-phenylpyridine)の順に低エネルギー側にシフトしていることが分かった。また,3,5-ジフェニルピラゾールがシクロメタル化した白金ユニットに1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)(dppf)がキレート配位した錯体[Pt(Ph2pz-κC,κN)(dppf)]の合成にも成功したが,このPt(II)-Fe(II)錯体は室温,低温とも発光を示さなかった。
|