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2013 年度 実施状況報告書

金属間相互作用の系統的理解を目指した混合金属錯体の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24550081
研究機関長崎大学

研究代表者

馬越 啓介  長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20213481)

キーワード白金 / 11族元素 / 混合金属錯体 / 発光 / 光物性 / 金属間相互作用
研究概要

本研究では,発光をプローブとして金属間相互作用を系統的に理解するために,様々な混合金属錯体を開発している。昨年度,ビピリジンおよびその誘導体がキレート配位した白金ユニットを含むZ型混合金属錯体 [Pt2M2(L)2(μ-3-tBupz)4](PF6)2 (L = bpy, 5,5'-dmbpy, 4,4'-dmbpy; M = Ag, Au, Cu)を合成し,発光特性を詳細に調べた。ビピリジンおよびその誘導体をキレート配位子として用いた場合には,生成する混合金属錯体は正電荷を帯びる。25年度は,フェニルピリジンがシクロメタル化した白金ユニットと架橋配位子として3,5-ジメチルピラゾールを用いることにより,分子性の混合金属錯体を合成した。そして,この混合金属錯体における配位子場強度の増大と電荷の減少が,発光特性にどのような影響を与えるか調べた。その結果,導入する11族の金属イオンとしてAg+を用いた場合には3-t-ブチルピラゾールを用いた場合と同様にZ型Pt2Ag2錯体が得られたが,Au+イオンを用いた場合には,PtAu2錯体が生成することが分かった。Pt2Ag2錯体の発光エネルギーを比較すると,分子性錯体の方がカチオン性錯体よりも低エネルギーの発光を示し,キレート配位子が,4,4'-dmbpy ~ bpy > dfppy (2-(2,4-difluorophenyl)pyridine) > ppy(2-phenylpyridine)の順に低エネルギー側にシフトしていることが分かった。また,3,5-ジフェニルピラゾールがシクロメタル化した白金ユニットに1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)(dppf)がキレート配位した錯体[Pt(Ph2pz-κC,κN)(dppf)]の合成にも成功したが,このPt(II)-Fe(II)錯体は室温,低温とも発光を示さなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は,混合金属錯体における配位子場強度の増大と電荷の減少が発光特性にどのような影響を与えるかを明らかにした。架橋配位子の置換基がt-ブチル基の場合にはPt-Ag錯体もPt-Au錯体もPt2M2の組成を有するZ型の混合金属錯体が生成するのに対し,置換基がメチル基の場合には,Pt-Ag錯体とPt-Au錯体で異なる構造の錯体が生成したことは驚きである。このことは,Pt2M2の組成を有するZ型混合金属錯体が熱的に最も安定な構造とは限らないことを示しており興味深い。また,当初の計画通り,「ジイミン配位子がキレート配位した白金ユニット」や「フェニルピリジンがシクロメタル化した白金ユニット」にビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンやo-フェニレンジアミンなどの酸化還元活性配位子を導入する研究も進展しており,新たな知見が得られつつある。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り,次年度も引き続きMLCTやLLCT励起状態に主に寄与する「ジイミン配位子がキレート配位した白金ユニット」や「フェニルピリジンがシクロメタル化した白金ユニット」にビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンや,o-フェニレンジアミンなどの酸化還元活性配位子を導入し,これらの配位子の酸化還元に伴う錯体全体の電荷の影響や,酸化還元活性配位子と白金(ジイミン)ユニット等との間の電子移動の有無が発光に与える影響について調べる。さらに,強発光性の新たな白金錯体および混合金属錯体の開発を促進し,企業等の協力を得ながら,有機EL素子への応用を模索する予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度への繰越額は,白金板を購入するための予算である。白金板を処理して得た白金塩に若干の余裕があったことと,白金の相場が高い水準で推移したため,白金板の購入を翌年度に延期したためである。
白金の相場を見ながら,早期に購入予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] ジフェニルトリアゾラトを配位子とする白金錯体の合成と性質2014

    • 著者名/発表者名
      濱崎翔子,金松泰範,有川康弘,馬越啓介
    • 学会等名
      日本化学会第94春季年会
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋)
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] ビピリジン誘導体を配位子とする混合金属錯体の合成と性質2014

    • 著者名/発表者名
      杉安理沙,東谷阿美,有川康弘,馬越啓介
    • 学会等名
      日本化学会第94春季年会
    • 発表場所
      名古屋大学(名古屋)
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] 発光エネルギー制御を目指した白金および混合金属錯体の開発2013

    • 著者名/発表者名
      馬越啓介
    • 学会等名
      錯体化学会第63回討論会
    • 発表場所
      琉球大学(沖縄)
    • 年月日
      20131102-20131104
    • 招待講演
  • [学会発表] 分子性Z型混合金属錯体の合成と発光特性2013

    • 著者名/発表者名
      西原一樹,有川康弘,馬越啓介
    • 学会等名
      錯体化学会第63回討論会
    • 発表場所
      琉球大学(沖縄)
    • 年月日
      20131102-20131104
  • [学会発表] p-フェニレンビス(ビピリジン)誘導体を配位子とする白金錯体の合成と性質2013

    • 著者名/発表者名
      川手崇裕,平田剛輝,小野寺玄,武内亮,有川康弘,木村正成,馬越啓介
    • 学会等名
      錯体化学会第63回討論会
    • 発表場所
      琉球大学(沖縄)
    • 年月日
      20131102-20131104
  • [学会発表] プラチナトリアジン骨格を有する白金錯体の合成と発光特性2013

    • 著者名/発表者名
      田中智浩,有川康弘,馬越啓介
    • 学会等名
      錯体化学会第63回討論会
    • 発表場所
      琉球大学(沖縄)
    • 年月日
      20131102-20131104
  • [学会発表] ピラゾラト配位子が架橋した混合金属錯体の合成と発光特性2013

    • 著者名/発表者名
      馬越啓介,東谷阿美,篠原仁実,西原一樹,有川康弘
    • 学会等名
      第25回配位化合物の光化学討論会
    • 発表場所
      唐津ロイヤルホテル(唐津)
    • 年月日
      20130805-20130807
  • [産業財産権] 分子性混合金属錯体およびこれを利用した有機電界発光素子2013

    • 発明者名
      馬越啓介,西原一樹
    • 権利者名
      国立大学法人長崎大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2013-212760
    • 出願年月日
      2013-10-10

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公開日: 2015-05-28  

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