研究実績の概要 |
本研究では,発光をプローブとして金属間相互作用を系統的に理解するために,様々な混合金属錯体を開発している。24~25年度に,ビピリジンおよびその誘導体がキレート配位した白金ユニットを用いると選択的にカチオン性Z型混合金属錯体 [Pt2M2(L)2(μ-3-tBupz)4](PF6)2 (L = bpy, 5,5’-dmbpy, 4,4’-dmbpy; M = Ag, Au, Cu)が生成するのに対し,フェニルピリジンがシクロメタル化した白金ユニットと架橋配位子として3,5-ジメチルピラゾールを用いると,導入する11族の金属イオンとしてAg+を用いた場合には分子性のZ型Pt2Ag2錯体が得られたが,Au+イオンを用いた場合には,PtAu2錯体が生成することが分かった。架橋配位子の置換基の違いが生成物の分子構造の違いに影響している可能性があるため,26年度は架橋配位子として3-t-ブチルピラゾールを用いて同様の混合金属錯体を合成したが,架橋配位子の置換基の違いによる影響は観測されなかった。一方,ビピリジンがキレート配位した白金ユニットに,アミジン部位を有するピラゾールである1-アミジノピラゾール塩酸塩を塩基存在下で作用させたところ,溶媒として用いたニトリルと1H-ピラゾール-1-カルボキシアミジンとのカップリングにより生じたイミドイルアミジナトを有する単核白金錯体[Pt(bpy){NH=C(pz)NC(R)=NH}]BF4(R = Me, Et, Ph)が生成することを見出した。これらの白金錯体は固体状態で結晶中のPt-Pt間距離に応じて黄緑色または黄色の発光を示した。これらの化合物の発光特性を詳細に検討する過程で、イミドイルアミジナト錯体がメカノクロミズムやベイポクロミズムの興味深い挙動を示すことを見出した。
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