研究課題/領域番号 |
24550082
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
篠崎 一英 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (40226139)
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キーワード | 発光 / 白金錯体 / 発光色チューニング / CIE図 / 時間分解発光 / 速度論解析 / エキシマー / 励起トリマー |
研究概要 |
単一の白金錯体を用いた、発光色チューニングを目的として研究を行った。錯体合成により青色発光を実現し、この錯体の励起二量体(エキシマー)発光により発光色チューニングを行った。具体的にはPt(dpb)Cl錯体(dpbH = 1,3-di(2-pyridyl)benzene)の配位子にF基およびメチル基を導入すること、およびClをCN基に置換することにより、もともとの錯体がもつ緑色発光をから青色へと変化させることに成功した。電子吸引基Fおよび電子供与基CH3基導入によるLUMOの不安定化と、CN基によるHOMOの安定化が効果的に青色発光に寄与した。この錯体Pt(Fmdpb)CNの発光色は、他の錯体で観測されているのと同様に、濃度増大に伴った発光色変化が観測された。しかし、その変化は特異的であり、青色→白色→オレンジ色であった。希薄溶液中では500nm付近に振動構造をもつスペクトルが得られたが、濃度が増大するにつれエキシマー発光に帰属される620nm付近のブロード発光の強度が増大していた。さらに濃度を上げると、近赤外領域に新たな発光スペクトルが観測された。これまでに観測されていない新規現象であった。時間分解発光スペクトルから、この発光を励起3量体からの発光であると結論した。速度論的解析により、モノマー発光、エキシマー発光、励起トリマー発光の発光寿命をそれぞれ12.8マイクロ秒, 2.13マイクロ秒, 0.68マイクロ秒と決定した。時間ごとに抜き出して作成したスペクトルをCIE図にプロットしたところ、光励起直後の青色から白色を経由してオレンジ色へと変化することが明らかとなった。濃度変化の場合ときわめて類似した結果を与えた。この錯体では、適切な濃度条件あるいは光励起後にゲートをかけることで、白色発光を抽出できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
錯体合成と溶液内エキシマー形成により、当初の目的である青、緑、赤色発光は達成されている。さらに、今回は白色発光を実現できたことは想定外の成果であるといえる。また、白金錯体励起トリマーはこれまでに報告例のない新規発見であった。これらの励起状態での速度論的解析により、発光寿命、2量化、3量化の速度定数を求めることができたことは大きな成果である。時間とともに変化する発光スペクトルを、CIE図を利用することで、可視化し、励起後1マイクロ秒前後で、白色発光となっていることを発見したことは意義があるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を深化する意味で、キラルな置換基(カンファー)を持つ白金錯体をについて、(+)体と(-)体をそれぞれ合成し、その発光挙動を観測している。キラルな錯体からは円偏光発光が観測される。3Dディスプレイにはこの円偏光が利用されているので、今回実現したフルカラー発光体を、円偏光発光と組み合わせることで、3Dフルカラ―ディスプレイ発光材料としての展開を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文を年度内に投稿しようと計画していたが、年度をまたぐことになった。そのため、予定していた論文校正費を年度内に使用することができなかった。 論文校正および投稿は年度明けすぐに行った。以降は当初の計買うに従い助成金を執行する予定である。
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