研究課題/領域番号 |
24550083
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
竹本 真 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20347511)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スズ配位子 / スタニレン(スタンニレン) / スタニリン(スタンニリン) / ルテニウム錯体 / 多核錯体 / 合金触媒 / 低配位化合物 / 高周期元素 |
研究概要 |
本研究の目的は、これまでに確立した配位不飽和な2核Ruイミド錯体の合成法を基盤として、架橋スズ配位子を持つ2核Ru錯体(以下Ru2Sn錯体と呼ぶ)を合成するとともに、それらの反応性を対応するRu2C錯体の反応性と比較しつつ精査することにより、支持配位子としての架橋スズ配位子の特徴を解明することである。本年度は、その第一段階として、Ru2Sn錯体の一般的な合成方法を確立するとともに、興味ある構造を明らかにすることに成功した。さらに、予備的な反応性検討の結果として、ある種のRu2Sn錯体がアルケンの異性化反応に高い触媒活性を示すことを見出すに至った。具体的には、2核ルテニウムアミド錯体[Cp*Ru(NHPh)]2と種々の2価スズ化合物SnX2との反応によりRu2Snビスアミド錯体[(Cp*Ru)2(SnX2)(NHPh)2]またはRu2Snイミド錯体[(Cp*Ru)2(SnX2)(NPh)]が得られることを見出した。ビスアミド錯体におけるRu-Sn結合は、Ru=Ru二重結合からルイス酸性Sn中心への供与結合により形成されており、イミド錯体においてはRu-Sn共有単結合を有することをX線構造解析およびDFT計算により明らかにした。また、Xとして解離しやすいClやOTfを用いることにより、Sn上が低配位状態となったカチオン種[(Cp*Ru)(SnCl)(NHPh)2](1+)および[(Cp*Ru)2(Sn)(NHPh)](2+)が生成することを見出した。以上の結果により、Ru2Sn錯体の反応性および触媒活性を対応するRu2C錯体と比較検討するための基盤が完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の目的として(1)スタニレン配位子をもつ2核ルテニウム錯体の合成、(2)2核ルテニウムスタニレン錯体の化学量論反応性の解明、(3)スタニレン架橋2核ルテニウム錯体による触媒反応の開発を掲げた。また、平成25年度以降の目的として(4)架橋スタニリンおよびスタニド配位子を有する2核ルテニウム錯体の合成反応性の解明および(5)遷移金属スズ合金触媒に関連した反応性の解明を掲げた。これらのうち、(1)については2核ルテニウムアミド錯体と2価スズ化合物との反応により一連のスタンニレン錯体の合成を達成した。また、(2)についても、合成したスタニレン錯体のスズ上での求核置換反応やスズ中心の還元的カップリング反応などRu2Sn錯体の反応性を理解する上で重要と思われる多くの知見が得られた。(3)としてRu2Sn(OAc)2錯体を触媒とするアリルベンゼンの異性化反応を見出した。Ru2Sn錯体によるアリル位C-H結合の活性化を経る触媒反応が示唆される。また、(1)(2)の検討過程で、スタニリンおよびスタニド型のRu2Sn錯体の合成にも成功し、平成25年度以降の目標である(4)の一部についても成果を得た。以上の成果をふまえ、本年度において当初の計画以上の進展をみたものと評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Ru2Sn錯体を用いた触媒反応の開発および反応機構の解明、(2)架橋スタニリンおよびスタニド配位子を有する2核ルテニウム錯体の合成反応性の解明および(3)遷移金属スズ合金触媒に関連した反応性の解明に取り組む。(1)については、本年度に見出したアリルベンゼンの異性化反応をさらに発展させるとともに新規な触媒反応の開拓に取り組む。(2)については、スズおよびルテニウム上に様々な置換基を有する架橋スタニリンおよびスタニド錯体を合成するとともに低配位スズ中心の反応性およびルテニウムとスズとの協同作用に基づく基質の活性化様式を明らかにする。(3)については、RuSn合金やPtSn合金について知られている特異な触媒作用(カルボニル化合物の官能基選択的水素化、アルカンの脱水素芳香族化)などに関連した触媒的および化学量論的反応性の解明に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
Ru2Sn錯体の合成と反応性の調査を行う上で必要な試薬類および実験器具類を消耗品として購入する。主な試薬として、三塩化ルテニウム、ペンタメチルシクロペンタジエン、スズハロゲン化物および各種溶媒、有機金属試薬が挙げられる。化合物や反応の解析に必要な分析試薬も購入する。例えば、NMR用重水素化溶媒などが挙げられる。さらに、平成25年11月に琉球大学にて開催予定の錯体化学会討論会および平成26年3月に関東地区で開催予定の日本化学会春季年会に出席し研究発表を行うための旅費を支出する計画である。
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