研究実績の概要 |
2 価の高周期 14 族元素化合物であるメタリレンER2 (E = Si, Ge, Sn, Pb)は、第2周期の同族体であるカルベンとの類似性および相違点に興味が持たれ、50年以上にわたり多くの研究がなされてきた。メタリレンの中でもスタンニレンおよびプルンビレンは、孤立電子対のs性が高く、また中心原子が電気的に陽性でルイス酸性を有するため、カルベンとの性質の違いが特に顕著である。近年では、ルイス酸性を有する低配位典型元素と遷移金属との協同効果に基づく新触媒の開発という観点から、メタリレンを配位子とする後周期遷移金属錯体の合成に興味が持たれている。研究代表者らは、カルベン、カルバイン、カーバイドなどの低原子価炭素種を配位子とする2核Ru錯体を合成し、その反応性を明らかにしてきた。最近、これらの高周期同族体であるスタンニレン、スタンニリンおよびスタンニド錯体にも研究対象を拡張し、Sn上に様々な置換基 を有する2核Ruスタンニレン錯体を合成している。本研究では、より低配位状態のSn中心を持つ錯体の合成を目的として、2核Ruスタンニリン錯体の合成を検討した。スタンニリン錯体の原料として、ジクロロスタンニレン錯体を合成し、Sn-Cl結合の還元を検討した結果、三角錐型の架橋クロロスタンニリン配位子を有する新規な2核Ru錯体の合成に成功し、その構造の詳細を単結晶X線構造解析により明らかにした。また、得られたクロロスタンニリン錯体の酸化還元により、分子間で可逆的にSn-Sn結合を形成する新規な反応性も明らかにした。 また、新たに2核Ruプルンビレン錯体の合成も検討したところ、2つのRuからPbへの供与結合によって形成された新規な結合様式を有する2核Ru架橋プルンビレン錯体の合成にも成功した。さらに配位不飽和なRu中心を有する架橋プルンビレン錯体の合成にも成功した。
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