研究課題/領域番号 |
24550084
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
石井 洋一 中央大学, 理工学部, 教授 (40193263)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シアナミド錯体 / 分子ワイヤ / 架橋錯体 / ルテニウム / イリジウム / 白金 / 混合金属錯体 |
研究概要 |
まず、既に合成に成功している 2核錯体 [Cp*Ru(NCN)]2 の上に補助配位子を導入することで末端窒素原子の求核反応性を制御し、連結反応を効果的に行うことを試みた。dppm配位子を導入した場合には末端窒素の反応性が顕著に向上し、二分子のシアナミド二核錯体がNCN-CH2-NCN 架橋で連結された [{Cp*(NCN)Ru}2(NCNCH2NCN){Ru(NCN)Cp*}2] が収率 44% で生成することが明らかとなった。一方、モノホスフィン配位子として PMe2Ph を導入した場合にはホスフィン配位子は1つしか配位せず、錯体の反応性も不十分であった。類似のイリジウム錯体 [Cp*Ru(NCN)]2 を用いた場合には、dppmを導入しても塩化メチレンによる連結反応は進行しないことから、ルテニウム錯体系は特徴的に高い反応性を持つことが示された。 一方、新規構造をもったシアナミド多核錯体の開発についても検討した。本年度は白金二核錯体 [(dppe)Pt(NCN)]2 に対して新たな金属フラグメントを取り込ませる反応を検討した結果、14 電子フラグメントである [Cp*Ir(PPh3)]2+ の取り込みによって N,N,N'-シアナミド架橋をもつ三核錯体 [{(dppe)Pt}2(NCN)2{Cp*Ir(PPh3)}]2+ が生成した。白金2核コア部分からシアナミド架橋がジアキシアル型で伸びてイリジウムを補足した形であり、従来にない配位形式となっている。一方、同じ14 電子フラグメントでも [PtCl(dppe)]+ の集積化では、シアナミド架橋が両側にジエクアトリアルに開いた四核錯体 [{(dppe)Pt}2(NCN)2{PtCl(dppe)}2]2+ の生成が示唆された。類似のニッケルフラグメントの取り込みでも同様の生成物が得られており、その完全な同定を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、アミド・イミド配位子としては比較的ソフトで、かつ立体的に小さく、多様な架橋構造が期待されるシアナミド配位子に着目し、シアナミド架橋の反応性を補助配位子で自在に調整しながら、構成単位となる金属フラグメントを一次元に連結させていく手法で、新規な分子ワイヤの合成方法を開発することを目指している。2012年度の研究では、連結される錯体ユニットとしてdppm配位子をもつルテニウムの反応性が優れていること、イリジウム錯体では反応性が低いことなどを確認し、NCN-CH2-NCNユニットで架橋した四核錯体の生成反応を確立できた。一方、シアナミド架橋多核錯体ユニット自体の開発も進め、白金二核錯体からスタートして新規なPt2Ir(NCN)2錯体の合成にも成功した。この錯体は従来知られているシアナミド架橋錯体の中で類例のない構造をもつものであり、シアナミド架橋錯体の配位化学がどのような制御を受けているかを明らかにするための重要な手掛かりとなるものと考えている。以上のことから、2012年度はほぼ予定の進捗であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に合成できた白金二核錯体から誘導される混合金属錯体について、同様の構造の錯体が一般的に合成できるかどうかを金属および補助配位子の組み合わせを変えて検討する。平成24年度の研究結果からは導入される金属フラグメントの電子数が特に重要な制御因子となっている感触を得ており、特にパラジウム、白金を中心に検討する。 また、ルテニウム二核錯体の連結手法について検討を進め、塩化メチレンにより誘導できるメチレン架橋以外にどのような架橋が利用できるかを検討する。たとえばハロボランを利用した架橋などがターゲットとなる。 さらに、ルテニウム以外の多核錯体を利用した分子ワイヤの合成も検討する。平成24年度にはイリジウムでは反応性が低いことが判明した。そこで、より反応性の高いシアナミド架橋錯体の開発のため、Mn, Fe, Reのシアナミド架橋多核錯体の合成を検討し、これらの連結反応についてもルテニウムの場合と同様に検討する。また、それらの酸化還元特性の測定も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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