研究概要 |
シアナミド架橋多核錯体の開発について、昨年度白金2核錯体への異種金属取り込みに成功したことから、新たにパラジウムをベースとしたシアナミド錯体について検討した。その結果、[PdCl2(diphosphine)]とK2NCNをNaBPh4とともにメタノール中で反応させることにより、N,N,N'-架橋の3核錯体[{Pd(diphosphine)}3(NCN)2](BPh4)2が高収率で生成することを見出した。白金-二座ホスフィン系ではシアナミド架橋を導入すると2核錯体が生成するが、興味深いことにパラジウム-二座ホスフィン系では2核錯体の生成は認められない。ジホスフィンとしてdppe, dppp, dppbの錯体が単離可能であり、またdpppの場合には結晶構造を確認した。一方、NaBArF4存在下で[PdCl2(dppe)]をK2NCNとメタノール中で反応させ、エタノール-ヘキサンから再結晶すると、新規な構造の5核錯体[Pd{Pd(dppe)}4(NCN)4][BArF4]2が中程度の収率で得られた。本5核錯体中のパラジウムはすべて同一平面上にあり、中心のパラジウム原子は4つのNCN配位子に、またその他のパラジウム原子はdppeと2つのNCN配位子に結合した構造である。NCN配位子の配位様式はN,N,N',N'-架橋で、全体として類例のない構造となっている。 また、白金二核錯体[{Pt(dppe)}2(NCN)2]の反応についても前年度から引き続き検討し、モリブデン錯体[Mo(CO)5(thf)]との反応では[Mo(CO)5]フラグメントがシアナミド配位子の末端窒素へ2つ配位した錯体を得た。反応の当量を変えても2つ配位した錯体のみが優先的に得られることから、第一の配位により第二の反応性が高まるような制御が働いているものと見られる。
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