研究課題/領域番号 |
24550088
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
崔 亨波 独立行政法人理化学研究所, 加藤分子物性研究室, 研究員 (10425415)
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キーワード | 誘電体 / ポーラス金属錯体 / 有極性分子 / 強誘電体 / 磁性金属錯体 |
研究概要 |
1)[Cu3La2(iminodiacetate)3](H2O)8 (iminodiacetate = NH(CH2COO)2)はc軸方向にチャンネル構造を持つポーラス物質である。チャンネルが空の場合、誘電率εrはほとんど温度変化をしないが、チャンネルの中に水分子が入った場合、150K付近からεrは上昇し180Kで減少し始めるが、室温付近で急激に上昇する。また、350K近傍では反強誘電的な遍歴曲線も観測され、[Cu3La2(iminodiacetate)3] (H2O)8は反強誘電的性質を持つポーラス誘電物質である。今回、結晶を真空加熱処理でチャンネル中の水分子を取り除き、エタノール雰囲気に置く事により、[Cu3La2(iminodiacetate)3] (EtOH)xを得た。誘電率の測定を行った結果、水分子が入った場合と比べ、150K 付近の誘電率上昇は消失し、約90K付近から緩やかに上昇し始め、240K付近から急激に上昇する。また、誘電率は260 K でピークを持ってさらに高い温度では減少する。水分子が入った場合に現れた室温付近で誘電率の急激の上昇は観測されず330Kまで減少する。また、260K以下では遍歴曲線も観測され、結晶が強誘電物質であることが証明された。この発見は、初めて同一ポーラス錯体が有極性分子の選択により強誘電性と反強誘電性をコントロルできる証明になった。2)目標の新規ポーラス物質である二次元的構造を持つポーラス金属錯体Co3[C6H4(COO)2]2C6H4C2 O4H)2(DEF)4(H2O)2結晶構造を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい強誘電体である[Cu3La2(iminodiacetate)3] (EtOH)xを発見し、誘電性および高電場下での性質を調べた結果、転移温度が比較的高い(260K)ポーラス強誘電物質を発見した。また、Co2+と配位子1,4-benzenedicarboxylateからなる二次元的構造を持つポーラス金属錯体Co3[C6H4(COO)2]2C6H4C2O4H)2 (DEF)4(H2O)2の構造を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1)新しく発見した強誘電体[Cu3La2(iminodiacetate)3] (EtOH)xの低温結晶構造を明らかにする事により、誘電異常と結晶構造の関係を明らかにする。2)Co3[C6H4(COO)2]2C6H4C2O4H)2 (DEF)4(H2O)2結晶の誘電性の測定を行うと同時に結晶中の溶媒分子を真空加熱し、極性溶媒分子と置換してから誘電的性質をしらべる。3)長さが異なる配位子 4, 4’-biphenyldiacarboxylate)を選択することにより、空孔直径が異なる金属錯体の構成を行うと同時に小さい金属錯体伝導性分子の挿入も試みる。
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