研究実績の概要 |
1)新規反強磁性ポーラス錯体であるCo3[C6H4(COO)2]2(C6H4C2O44H)(DEF)4(H2O)2の低温構造を新しい測定装置を利用して測定行い、90Kで精密構造を決定できので、磁気特性をよく理解することが可能となった。 2)ポーラスのナノ空間に挿入可能な短い有機分子からなる単結晶の電気的性質の測定において、分子骨格に分子間相互作用を強めることが期待できる、テルルを有する有機分子TMTTeN (Tetramethyltetrateruronaphthalene)の単結晶を42万気圧まで測定し、その金属化について検討し、その結果を物理学会秋年会で報告した。電気抵抗の温度依存性を精密に測定することにより、30 万気圧以上で現れると予想される金属状態の確認を目的としたが、42万気圧でも活性化エネルギーが非常に小さい半金属であった。 3)ダイヤモンドアンビル(DAC)を用いた超高圧下電気的測定技術の改良を行い、静水圧性が議論されてきたDACを用いた電気的性質の測定でも,改良を施すことでキュービックアンビルセル(CAC)を用いた測定結果を再現できるほどの良質な圧力下測定が実現できることが判明し、その結果を論文にまとめた。(The Review of High Pressure Science and Technology, 25(4), 292-297 (2015))DACはCAC装置に比べ値段が安く,直径が小さいアンビルを選択することによりCACでは到達できない高圧を発生できる。さらに,小型セルの設計が可能であり,実験コストを節約し,磁場中の回転も容易にできる優れた特性をもっている。このような特性と試料への配線を更に工夫していけば,DACは将来の多重極限環境下物性測定において非常に強力な装置になることが期待できる。
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