研究課題/領域番号 |
24550089
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古川 潤一 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 特任助教 (30374193)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | グライコミクス / プロテオグリカン / β脱離反応 / ピラゾロン / O結合型糖鎖 / マイクロ波 |
研究概要 |
本研究ではピラゾロン試薬共存下でのβ脱離反応を利用した糖鎖および脱修飾化ペプチド解析法の基盤技術をさらに進展させ、有用な新規ピラゾロン試薬の開発、さらにはセリン残基修飾の一つである「プロテオグリカンの共通四糖橋渡し構造および糖鎖結合部位の一斉解析法」の開発を目的としている。 申請者はまず、新規高感度ピラゾロン試薬の開発と糖鎖標識反応機構の解明について研究を進めた。複数のピラゾロン誘導体合成を開始し、定量性を目的とした蛍光基を導入した新規ピラゾロン化合物の合成を完了した。得られた化合物は、これまでに使用していたピラゾロン共存下β脱離反応溶液には難溶性であり、種々反応条件の検討の結果、DMSO等の溶媒中でも同様に反応が進行することが確認された。合成した試薬と糖鎖との反応性については、合成ピラゾロン試薬のサイズ等が重要であり、得られた知見をもとに新たな試薬の設計・合成を進めている。 O-結合型糖鎖のエンリッチ法の開発の一環としては、本研究課題である多糖を有するプロテオグリカンについて検討を行い、プロテアーゼ等の酵素消化後にエタノール沈殿等を行うことでペプチドグリカンを効率よくエンリッチすることがでることが判明した。また、得られたペプチドグリカンをピラゾロン共存下β脱離反応を行うことでプロテオグリカンの糖鎖結合部位を同定できた。 また、ムチン糖タンパク質であるブタ胃ムチンを用いて高温条件下におけるピラゾロン共存下β脱離反応の条件を検討した結果、O結合型糖鎖の回収量が高効率化され、反応時間も16時間から2時間へと大幅に短縮することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に合成したピラゾロン試薬については反応溶媒における溶解性や糖鎖との反応性などの知見を得ることができ、より有用なピラゾロン試薬の設計および合成を順調に進めることができている。またプロテオグリカンについてはエタノール沈殿法により効率よくエンリッチすることが可能であったため、本計画を十分に遂行することが可能となった。さらには高温条件下におけるピラゾロン共存下β脱離反応により、O結合型糖鎖の回収量が大幅に向上し、反応時間が大幅に短縮できる新たな方法が確立できたことは、セリン/スレオニン残基に修飾された様々な糖鎖解析に応用できるだけでなく、エンリッチ法を開発するうえでも鍵となる反応であると考えられる。以上より、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、蛍光基を有する新規ピラゾロン試薬の合成および評価を引き続き進めていく。またエタノール沈殿によるエンリッチ法を利用してプロテオグリカンの共通の四糖橋渡し構造および糖鎖結合部位の同定についての研究を進める。解析法についてはMALDI-TOF MS以外にLC MSによる検討を開始する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の詳細は新規試薬を合成するためのガラス器具、試薬を購入する。またプロテオグリカンへの解析では、プロテアーゼやリアーゼ等の必要な酵素やHPLC カラムなどを購入する。プロテオグリカンのリアーゼ酵素消化後のグリコサミノグリカン二糖の解析は、糖鎖捕捉ビーズ(BlotGlyco)を購入して解析を行う予定である。その他に質量分析に必要なマトリクス試薬やMALDIターゲット等の購入を計画している。
|