研究課題/領域番号 |
24550089
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古川 潤一 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 特任助教 (30374193)
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キーワード | β脱離反応 / ピラゾロン / プロテオグリカン / グライコミクス / マイクロ波 |
研究概要 |
本研究ではピラゾロン試薬共存下でのβ脱離反応(BEP反応)を利用した糖鎖および脱修飾化ペプチド解析法をさらに進展させ、セリン残基修飾の一つであるプロテオグリカンの共通四糖橋渡し構造および糖鎖結合部位の一斉解析を目的とし研究を遂行している。 申請者は、新規高感度ピラゾロン試薬の開発と糖鎖標識反応機構の解明を目的として引き続き研究を進めた。特に蛍光基を導入した新規ピラゾロン化合物の合成が達成されることで、1)β脱離糖鎖および脱グリコシル化ペプチド/タンパク質の定量解析、2)蛍光標識化合物の選択的な回収、が可能となり、本研究の研究計画に挙げている両方が達成できる。昨年度より引き続き様々なピラゾロン誘導体の合成について検討を進めているが、環化反応の効率が悪いため、前年度購入したマイクロ波合成装置や亜鉛錯体を触媒に用いた環化反応について検討した。また、アミノ基を持つピラゾロンを糖鎖と反応させた後、イソシアネート等の試薬を用いることで、二段階反応によって誘導化できることが明らかとなった。さらに、ピラゾロンは糖鎖の還元末端に二つ導入されるが1つを選択的に切断でき、HPLC解析への適用が示唆された。 本研究課題のエンリッチ法の開発の一環としては、グリコサミノグリカンを有するプロテオグリカンについて検討を行い、プロテアーゼ等の酵素消化後にエタノール沈殿等を行うことで多糖を有する糖ペプチドを効率よくエンリッチすることができることが判明している。本年度はさらにゲル濾過などを用いた精製法についても検討を開始した。 最終年度は新規試薬によるBEP反応条件や多糖を有する糖ペプチドの精製条件を最適化し、プロテオグリカンの共通四糖橋渡し構造および糖鎖結合部位の一斉解析法を確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピラゾロン合成については、最終的な環形成が進行しにくいため、マイクロ波を利用した無溶媒反応や亜鉛錯体を用いた環形成反応などについての検討を進めた。また、アミノ基をもつピラゾロン試薬での糖鎖標識についても検討を開始し、イソシアネート試薬などを用いることで二段階反応によりアミノ基を選択的に修飾できることが明らかとなり、目的物への新たなルートが示された。また、ピラゾロン共存下β脱離反応によって、ピラゾロン試薬は糖鎖に二つ導入されるが、選択的にピラゾロンひとつを切断でき、合成している試薬の立体障害により二つの導入が困難な場合においても、最終的にモノピラゾロン誘導体へと変換することで、HPLC解析へ適応可能である。また、実際のサンプルのエンリッチ法としてはゲル濾過(superdex75)について検討を進め、糖ペプチドを回収する系についても概ね目処がついている。以上より、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、蛍光基を導入したピラゾロン試薬を合成を完了し、新規ピラゾロン試薬によるBEP反応の最適化を行う。またプロテオグリカンの一つであるシンデカンをトリプシンなどの酵素消化後、これまでに検討を行ったエタノール沈殿やゲル濾過などにより目的とする多糖を有する糖ペプチドを回収した上で、目的であるプロテオグリカンの四糖橋渡し構造および糖鎖結合部位の一斉解析を行い、本課題を目的としたプロトコールを確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規ピラゾロン試薬の開発を進めているが、最終的な化合物の選定までは達しておらず、本プロトコールに合わせた多糖を有するプロテオグリカンのエンリッチ法やLCMSでのカラムの選定が完了していないため、当初の使用額より少なかった。 新規ピラゾロン試薬合成に必要な試薬やガラス器具を購入し、合成を完了する予定である。またBEP反応に使用する試薬を選定した上でシンデカンなどのプロテオグリカンや分析に適したカラム等を購入し、本研究課題であるプロテオグリカンの共通の四糖橋渡し構造および糖鎖結合部位の同定のプロトコールを確立する。また、グリコサミノグリカンのGAG二糖構造の解析は糖鎖捕捉ビーズ(BlotGlyco)を購入し実施する。
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