本研究ではピラゾロン試薬共存化でのβ脱離反応(BEP反応)を利用した糖鎖および脱修飾ペプチドの解析法をさらに進化させ、セリン残基修飾の一つであるプロテオグリカンの共通四糖橋渡し構造および糖鎖結合部位の一斉解析を目的として研究を遂行した。申請者は1)プロテオグリカンを含むO結合型糖鎖のBEP反応における効率化を目指し、マイクロ波を用いた反応について検討した。マイクロ波支援BEP反応では、ピラゾロン修飾およびβ脱離反応による糖鎖の切断がともに効率化でき、これまで16時間必要な反応時間を2時間まで短縮でき、さらに二倍以上でO結合型糖鎖を回収できる反応条件を確立するに至った。これにより、組織等の生体試料におけるO結合型糖鎖の解析が可能となった。次に2)グリコサミノグリカンを有するペプチドグリコサミノグリカンの効率的なエンリッチ法を確立を目的とし、プロテオグリカンの一つである尿トリプシン阻害剤(Urinary Trypsin Inhibitor)のペプチドグリコサミノグリカンをトリプシン消化とエタノール沈殿を組み合わせることで効率的にエンリッチでき、さらに共通四糖橋渡し構造をふくむ六糖構造およびグリコサミノグリカン繰り返し二糖構造の一斉解析を達成した。3)蛍光基を導入した新規ピラゾロン試薬の合成は達成しているが、合成試薬の溶解性や立体障害などの問題から目的とするピラゾロン二置換体のO結合型糖鎖の生成効率が低い問題点が残されているが、本研究によりプロテオグリカンの一斉解析およびマイクロ波支援BEP反応による効率化が達成できた。
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