研究課題/領域番号 |
24550090
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
北川 文彦 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (20362452)
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キーワード | 分離分析 / チップ分析 |
研究概要 |
キャピラリー電気泳動 (CE) およびマイクロチップ電気泳動 (MCE) において,双極電極および極性反転を利用したオンライン試料濃縮技術の開発にあたり,濃縮機構の解明を目指して検討を行った。MCEにおいて直線状チャネルに種々の金属材料からなる双極電極を集積したチップを作製し,極性反転濃縮を行ったところ,白金・金・アルミニウム・銅すべての電極材料でも試料が濃縮された。銅のような金属でも濃縮が達成されたことから,白金などの貴金属特有の触媒作用が双極電極近傍での高いpHゾーン生成に寄与する可能性は否定され,双極電極は電気分解の場として機能していると考えられる。この高pHゾーンが生成する機構を考察し,水の電気分解時のH+とOH-の生成量の違いに起因した双極電極上におけるH+濃度の不均一分布の生成ならびに電圧極性反転時のH+欠乏ゾーンでOH-の大量生成が,幅の狭い高pHゾーンの生成に寄与していることが明らかとなった。 種々の試料成分の濃縮について検討を行ったところ,アミノ酸,タンパク質,糖などのラベル化に汎用されるアニオン性蛍光色素の濃縮や,タンパク質混合試料の濃縮・分離を達成した。したがって双極電極の利用により,直線状チャネル全体に試料を注入して電圧極性を反転するだけで,生体成分を濃縮・MCE分離できることが示された。 CEにおいては,キャピラリー内への双極電極作製法の検討を行い,白金線をキャピラリー末端から挿入し,泳動液の注入流速の制御により位置を調節する方法と,キャピラリーを切断してニッケル微粒子接着剤を内部に塗布後,熱収縮チューブにより接合する方法が有効であることがわかった。極性反転を利用した濃縮を行ったところ,白金線・ニッケル微粒子キャピラリーともに標準試料の100~300倍の濃縮を達成したことから,本法が生体試料の高感度CE分析に利用可能なことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
質量分析計との結合が遅れているため
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今後の研究の推進方策 |
MCEへの応用について,ポリジメチルシロキサン (PDMS) 以外の基板材料への展開を検討したが,ポリメチルメタクリレート (PMMA) では双極電極近傍からの液漏れが激しく,接合が問題となっている。そこで従来どおりPDMS基板で作製したMCEデバイスを用いて検討を進め,質量分析計との結合を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費の先方支給を伴う招待講演・依頼講演が予想より多く,当初の使用計画案よりも旅費支出額が下回ったため 学会参加回数を増やし,旅費を増額するとともに,実験消耗品の増額に充てる予定である
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