ウイルスや病原菌等で起こる病気を除く疾患の多くは,タンパク質の機能や立体構造の変化による異常に起因している。現在タンパク質検出を行う際には,抗体を用いた微量タンパク質検出法であるイムノブロット法などの手法を用いて細胞から取り出した状態で解析が行われている。しかしタンパク質は温度や塩濃度,pHなどの周囲環境の変化によって容易に変性が起こるため細胞の状態でそのまま測定,解析できることが望ましいといえる。よって細胞内タンパク質の動態解析は,腫瘍マーカーをターゲットにした医療診断や低分子量薬剤設計において極めて重要である。 金ナノ粒子はその局在表面プラズモン共鳴(LSPR)により特定波長の散乱光を増強し,粒子周囲の屈折率変化をセンシングできる特性を有する。すなわち,金ナノ粒子表面へ目的タンパク質や薬剤化合物を修飾し,細胞内へ導入することで,LSPR光散乱により,細胞内での局在位置と分子間相互作用を同時検出可能な高効率細胞アッセイが実現できる。 本研究では,化学機能を複合化した金ナノ粒子を細胞内への導入し,金ナノ粒子の有する局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用することで,細胞内に導入したナノ粒子の局在位置のリアルタイム可視化を行い,細胞のナノ物質取り込み機構解明に資する方法論の確立を目指すものである。本年度は,ナノ粒子の抗体修飾を念頭においたイムノグロブリンによる修飾法の最適化およびその細胞内導入とレーザー顕微鏡イメージングを中心に検討を行い、達成した。
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