研究課題/領域番号 |
24550092
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
水口 仁志 山形大学, 理工学研究科, 助教 (30333991)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | バイオセンサー / 電気化学センサー / フロー電解セル / トラックエッチ膜 / 酵素センサー |
研究概要 |
本研究の目的は,試料液を通すだけで全電解が可能なトラックエッチ膜フィルター電極と固定化酵素を積層した新しい集積化酵素センサーシステムを提案することである。これはアスコルビン酸等の妨害物質を全電解フィルターで完全に分解・除去しつつ,酵素反応で生成した過酸化水素を全電解で検出・消費するシステムである。 平成24年度は,まず当該システムの動作を実証するために,トラックエッチ膜フィルター電極と固定化酵素を搭載したフロー電解セルの作製を行った。本研究で作製した電解セルは,作用電極と検出電極の間に固定化酵素を配置し,検出電極と対電極の間に,電極同士の短絡を防ぐためのスペーサーを挿入した構造となっている。固定化酵素部については,別途作製したサポートスクリンを用いて配置した。アミノ基が修飾されたシリカゲルを固定化担体として使用し,グルタルアルデヒドを用いる架橋法によって酵素を固定したのち,サポートスクリンーを用いて試料液の流路に配置した。本研究では,グルコース酸化酵素を用いて,アスコルビン酸および尿酸が共存する溶液中のグルコースを選択的に検出することで当該システムの実証試験を行った。作製した電解セルは,定流量送液ポンプ,六方バルブ,サンプルループと接続し,連続分析が可能なフローインジェクションシステムを構築した。電解セルの各電極は,本年度導入したマルチポテンショスタット(北斗電工社製HA1010mM4A)に接続してデータレコーダを介してデータを回収した。その結果,ヒトの血液中で検出される濃度レベルでのアスコルビン酸と尿酸が共存する試料において,グルコースに選択的な電流応答を得ることができ,当該システムの動作を実証することができた。この成果は,次年度以降において,さらに複数段の酵素を直列に配置することや,作製した電解セルの実用化に向けた布石となる重要なものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トラックエッチ膜フィルター電極と固定化酵素を搭載したフロー電解セルの作製 本年度は当初計画通り,トラックエッチ膜フィルター電極と固定化酵素を搭載したフロー電解セルの作製に成功した。また,本研究では,これに先立ってトラックエッチ膜フィルター電極を用いる電解による妨害物質の分解・除去性能についても確認し,アスコルビン酸および尿酸については,一枚のフィルター電極で90%以上の分解除去が可能であることが確認できた。さらに,フロー電解セルを作製するにあたっては,作用電極を複数枚重ねることによって当初目標の全電解を達成できることがわかった。また,固定化酵素部については,当初アフィニティーメンブレンの使用を検討したが,固定化酵素の十分な活性が得られなかった。そこでこれに代えて,サポートスクリーンを新たに作製し,アミノ基が修飾されたシリカゲルを固定化担体として用いて流路に設置することによって,当初目標のフロー電解セルの作製に成功した。 フローインジェクション分析系の構築と性能評価 前記で作製したフロー電解セルを,定流量送液ポンプ,六方バルブ,サンプルループと接続してフローインジェクションシステムを構築した。電解セルの各電極は,本年度導入したマルチポテンショスタットに接続して定電位電解を行いつつ各電極における電流値データを回収した。その結果,ヒトの血液中で検出される濃度レベルでのアスコルビン酸と尿酸が共存する試料において,グルコースに選択的な電流応答を得ることができ,当該システムの動作を実証することができた。 以上のように,平成24年度は当初計画通り順調に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,当初計画通り,複数種の基質を同時に検出できるマルチ酵素センサーシステムの構築と,将来的な実用化を想定したフロー電解セルの改良を行う。 前年度までに,サポートスクリーンを用いることで固定化酵素を試料液の流路に配置できることが明らかとなったので,同様の方法によって複数段の酵素リアクターを積載することによって,単一のプラットフォームで複数種の基質を同時に検出できるシステムを構築するとともに,本研究で提案するシステムの動作実証試験を行う。 フロー電解セルの改良については,次の2つの方針にしたがって改良を行うこととする。一つは,食品分析を目指すもので,アスコルビン酸をはじめとする妨害物質の共存量が著しい試料にも適用できるよう,作用電極の積層枚数とその分解除去性能明らかにして,食品分析に適したフローセルの提案を行う。もう一つは,生体試料分析を目指すもので,微少量の試料にも対応できるよう,現在までに作製・動作実証できたフロー電解セルの小型化(特にフローセル内容積の小量化)を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|