研究課題/領域番号 |
24550093
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松岡 史郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10219404)
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研究分担者 |
吉村 和久 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80112291)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磯焼け / 固相分光法 / 沿岸海水 / 溶存鉄 |
研究概要 |
我々の研究グループは、海水中の溶存Fe(II)の分析にこれまで固相分光法を用いてきた。しかしながら同法には、一回の試料測定に数 100 cm3の試料溶液を必要とするため、複数回の測定を想定すれば各試料採取地点で 1 dm3以上の試料溶液が必要となること、このため現地での試料のろ過に長時間を要し、この間に試料が汚染を受けやすいこと、などといった問題点があった。 これらの問題点を改善する目的から、高い感度を維持したまま試料溶液体積を減少させ、しかもクローズドシステムによる分析が可能な固相分光流れ分析法に対し、溶存有機物の固相に対する非可逆的吸着による定量値の再現性の低下を克服する目的から、1 回の定量操作ごとに光学セルに対する固相の溶出と再充填を繰り返すビーズインジェクション法を適用した新たな分析法を開発し、さらに測光装置・送液装置にバッテリー駆動の装置を用いることによるon-site分析化への試みについても検討した。 この新規に開発した分析法の測定精度を実試料を用いて検討したところ、sub-μg dm-3 レベルのFe(II)が、相対標準偏差で±5%以下と良好な再現性のもとに定量できることが確認された。また8 cm3の疑似海水試料を用いて検量線を作成し、ブランク溶液の繰り返し測定(n=7)の結果得られた検出限界(3σ)は 44 pptであり、本研究の目的には十分な検出感度であることも確認された。 測光には、USB電源で駆動可能なフォトダイオードアレー検出器とバッテリー駆動 のLED光源(いずれも本年度購入した固相分光測定装置)を用いることが、また送液には同様にバッテリー駆動のペリスタリックポンプを用いることが、それぞれ可能であり、本システムがon-siteにおける超微量Fe(II)の簡易な高感度分析法としても適していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者によるFe(II)分析法の研究、また共同研究者による「溶存鉄化学種の状態変化」や「試料採取後から定量までの試料保存法」に関する研究は、ほぼ順調に進んでいる。しかしながら代表者・分担者によるFe(III)化学種の同定に関する研究に遅れが生じている。その理由は、本研究に用いる予定であったコリジョンセルを適用したICP-MS(新潟大学共同利用機器)に、プラズマが突然消灯するトラブルが12月以降続いているためである。同装置に対する修理は現在も続いているが、このトラブルは完全には解消していない。場合によっては他機関の装置が使用できないか、現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に達成できなかった項目を引き続き行うと共に,新たに以下の研究を行う。 ① 実試料のサンプリングと定量(代表者・分担者):代表者は,日本海側において磯焼けが見られる海域として,新潟県粟島の沿岸域(粟島は島全体で磯焼けが進行しており,しかも島内には河川が存在していない),新潟県佐渡島周辺(沿岸域では磯焼けは進行していないが,沖合では若干の磯焼けがみられる),また対照海域として磯の存在しない新潟県上越市西部,の海水をそれぞれサンプリングして定量する。 また分担者は,磯焼けの顕著な長崎県西海市周辺海域と福岡市の博多湾周辺,大分県沿岸域、また対照海域である佐賀県北部の海域を担当する。サンプリングは季節ごとの年4回に加え,海藻の生育に特に多くの栄養塩が必要とされる冬期は一月ごとに行う。 さらに代表者・分担者とも,研究対象海域に対する流入河川についても,鉄化学種濃度の測定を行う。 ②データの評価(分担者):鉄化学種に関する平衡論的議論のための安定有機錯体濃度の見積もり,溶存鉄以外の成分分析もあわせて行う。サンプリングの対象とした海域 への流入河川,沿岸海水分析で得られたデータから,沿岸海水中に存在する溶存鉄の平衡関係を化学平衡計算プログラムPHREEQにより解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験器具購入。
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