研究課題/領域番号 |
24550093
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松岡 史郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10219404)
|
研究分担者 |
吉村 和久 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80112291)
|
キーワード | 磯焼け / 固相分光法 / 沿岸海水 / 溶存鉄 / 現場分析 |
研究概要 |
表層海水中の鉄化学種の濃度が酸化還元・溶解平衡により支配されているならば、磯焼けの要因の一つとして考えられているFe(II)化学種ははpptレベルでしか存在しえないことが平衡計算の結果より明らかである。しかしながら我々がこれまで行ってきた様々な沿岸海水中の溶存鉄分析の結果は、上記の予想と異なり、 ほとんど全ての海水中でsub-ppbレベルのFe(II)の存在を確認した。なぜこれほどの濃度でFe(II)が検出されるのかについては不明であるが、試料採取後から定量までの間に生じるFe(II)化学種の溶存酸素による酸化や、試料保存のために行う酸固定がその原因であると考えている。これらの点を明らかにするためには、 半減期が短いFe(II)化学種を試料採取地点で直ちに測定することが必要となる。 これまで我々は、微量成分の化学状態別分析法に優れた固相分光流れ分析法(FI-SPS)に対し、1回の定量操作ごとに光学セルに対する固相の排出と再充填を繰り返すビーズインジェクション法(BI)を適用した新たな分析法(BI-FI-SPS)を開発し、これに Fe(II)- 1,10-フェナントロリン錯生成系を適用すれば、海水中にsub-ppbレベルで存在する溶存Fe(II)の定量が容易に行えることを報告している。本年度は同法のオンサイト分析化にも取り組み、種々の至適条件の検討結果から、固相の透過光測定にはノートPCを制御と電源供給に用いるポータブルタイプのシングルビーム分光光度計(光検出器はCCDアレーセンサー)を、光源には高輝度LEDを、送液にはバッテリー(9V)駆動のペリスタリックポンプをそれぞれ用いることで、海水中にsub-ppbレベルで存在するFe(II)のオンサイト分析が可能であることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
磯焼けの原因と考えられている鉄化学種濃度が予想値よりもかなり高いため、その原因を追究するためのFe(II)分析法の見直し、最適化に時間を費やした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度に達成できなかった項目を引き続き行うと共に、平成24年度と同様に実試料のサンプリングと定量(代表者は、日本海側において磯焼けが見られる海域として新潟県粟島の沿岸域新潟県佐渡島周辺、また対照海域として磯の存在しない新潟県上越市西部の海水、また分担者は、磯焼けの顕著な長崎県西海市周辺海域と福岡市の博多湾周辺、大分県沿岸域、また対照海域である佐賀県北部の海域)を行う。また代表者・分担者とも、研究対象海域に対する流入河川についても、鉄化学種濃度の測定を行う。これらと併せて、鉄化学種に関する平衡論的議論のためのデータ解析を分担者が行い、磯焼けと鉄化学種のうどとの関連についての詳細を明らかにする。
|