研究課題/領域番号 |
24550094
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鈴木 正康 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (70226554)
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キーワード | バイオセンサ / 免疫センサ / 表面プラズモン共鳴 / 計測工学 / 生物・生体工学 |
研究概要 |
まず24年度に引き続き、銀薄膜層を含む多重層薄膜を用いたSPRセンサチップの特性評価について検討した。Winnspallによるシミュレーション結果と実測定結果との差異について実試料の物性定数がデータベースの値と異なる可能性が考えられたのでエリプソメータを用いて実試料の屈折率を測定した。この値を用いたところ両者の適合性が向上した。さらに適合性を高めるために膜の熱処理などの検討を行っている。 25年度から新たに光源波長の差異が2次元SPRイメージに与える影響について検討した。光源波長と密接な関係がある指標として浸透深さ(侵入長)が知られている。理論上、短波長光源を用いたSPR測定では浸透深さは短く、長波長光源では長くなる。浸透深さはSPRセンサが実際に“見ている”範囲を示している。したがってSPR変化の見られた現象が細胞膜表面付近なのか、細胞膜の内側の細胞質で起きていることなのか等を知る有力な指標となる。したがって異なる光源波長で得られたSPR画像の差分画像を元にした新しいSPRイメージング法の創製につながると考えられる。ここでは3種類の粒径の異なるガラスビーズを用いて、実際に浸透深さの差を反映したSPR画像が得られているかを評価した。PDMSで作製した円柱試料では光源波長を505~940nmまで変化させてもSPR画像の大きさは差が見られなかったが、ガラスビーズを用いた同様の実験では光源波長が長くなるにつれてSPR画像の直径も増大した。これらを各波長における浸透深さの理論値から算出した直径と比較したところいずれの粒径のビーズにおいても、理論値と実測値はほぼ同様の結果となった。これらの結果から光源波長を変えることでセンサ基板面からの異なる距離の範囲を見ることが出来ていることが実証できた。この成果をもとに26年度は2波長合成画像法として展開していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた研究計画についてはほぼ予定通り遂行できた。光源波長の差によって浸透深さが異なることを実際に実験で実証できたことは26年度の2波長合成画像法の展開につながる有用な成果となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進展しており、今後もほぼ研究計画通りに推進していく。最終年度は、SPR特性が異なる2種類の波長で得られた2つのSPR画像の差や比を画像演算で算出して新たな合成画像を作成してこれらをもとに測定する2波長合成画像法を実証する。そしてこの手法を、これまで研究代表者が行ってきた微小ウェル中での免疫測定やリンパ球の表面抗原への抗体結合時の細胞応答の検出等に適用し効果を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は順調に進展しているが成果発表に遅れが生じていることが次年度使用額が生じた主因である。研究成果発表のための旅費と学会誌投稿料が未執行となった。 平成26年度は積極的に成果発表を推進する。併せて当初予定していた平成26年度経費により当初の研究計画も推進する。
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