研究課題/領域番号 |
24550096
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
宮部 寛志 立教大学, 理学部, 教授 (10281015)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子間相互作用 / クロマトグラフィー / 光学異性体 |
研究概要 |
1. モーメント解析式の開発 クロマト溶出ピークの一次及び二次モーメント値を解析するために必要な新規モーメント式を導出した。その際、固定相表面の光学活性リガンドとキラル分子との間の化学反応速度をラングミュア型の速度式を用いて表わした。先ず、カラム内のクロマトグラフィー挙動をGeneral rate modelに基づいて表わし、この基礎式の解析解をラプラス域で求めた。次に、この解析解から実時間域における溶出ピークの一次、二次モーメント値を表わすモーメント解析式を誘導した。 2. 液相系分子拡散係数推算法の開発 絶対反応速度論に基づき、溶媒分子間の会合だけではなく溶質分子間の会合をも考慮した分子拡散係数の推算法を開発した。また、分子の会合度を表わすため、溶解度パラメータに基づく会合係数の推算法も開発した。様々な溶質と溶媒の組み合わせについて分子拡散係数の推算値と既往の実測値を比較した結果、両者は相対誤差約14%で一致した。 3. 分子間相互作用の解析 具体的実験系として、β-臭素化シクロデキストリン結合シリカゲル粒子充填カラムとアセトニトリル/バッファー水溶液を用いる光学異性体分離系を取り上げ、この系における2-フェノキシプロピオン酸(R体とS体)のクロマトグラフィー挙動を解析した。先ず、理論段高の移動相流速依存性を調べた。次に、解析に必要な関連パラメータ(カラム空隙率、分離剤細孔率、液境膜物質移動係数、細孔拡散係数、及び表面拡散係数)を逆サイズ排除クロマトグラフィーやピークパーキング法等により求めた。それらの情報に基づいて理論段高の移動相流速依存性をモーメント解析し、β-臭素化シクロデキストリンと2-フェノキシプロピオン酸との間の相互作用に関する平衡パラメータ(親和定数)及び速度パラメータ(結合速度定数と解離速度定数)を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に計画していた検討項目が全て実施済であることから、研究計画はおおむね順調に進展していると評価する。 すなわち、先ず分子間相互作用を解析するために必要な新規モーメント式を導出した。次に、具体的実験系における実験データを測定し、新規モーメント式に基づきそれを解析した。なお、実験データを測定する際には、モーメント解析に必要な各種関連パラメータの値が実験的に測定できる、あるいは推算法により計算できることも確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究の結果、クロマトグラフィーによる分子間相互作用解析法の枠組みを構築し、その有用性を確認した。すなわち、流通式実験法(クロマトグラフィー)とモーメント解析法を組み合わせ、機能性リガンド-基質分子間の分子間相互作用の解析に関する実験操作法と解析手順を確立した。そこで、具体的な光学分離系に本解析法を適用し、光学活性リガンドと光学異性体分子との間の分子間相互作用に関する平衡論的及び速度論的解析情報を導出した。 平成25年度には当初の計画通り、平成24年度に実験を行った光学異性体分離系とは異なる実験系を取り上げ、その系における光学異性体分離挙動を本法により解析する。具体的には、多糖(アミロース)誘導体コーティング型キラルカラム等を用いる光学異性体分離系の分離挙動を解析する。平成24年度と同様に、分子間相互作用に関する各種パラメータ(親和定数、結合速度定数や解離速度定数)が定量的に測定できることを示し、本法の有用性をさらに実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年4月に研究代表者が富山大学から立教大学へ異動して実験スペースが減少したことや、申請額に対して交付決定額が減少したこと等により、平成24年度に予定していた物品(具体的には低温恒温容器)の購入を控えた。次年度使用額の数値はほぼこれに対応する。 平成25年度には当初予定した低温恒温容器と同等の機能を有する実験機材の購入を検討する。また当初の申請では、平成25年度の直接経費の費目としては消耗品と旅費を計画していた。これらの研究費は、当初の研究計画の成果を学会等で発表するために利用する。
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