光学異性体分離系(多糖(アミロース)誘導体コーティング型キラルカラムとn-ヘキサン/エタノール混合溶媒を用いるクロマト分離系)における2-ナフチルアミン(R体)のクロマトグラフィー挙動を解析した。カラム温度条件を278~308 Kの範囲で変化させ、モーメント理論に基づきアミロース誘導体―2-ナフチルアミン(R体)間の分子間相互作用を解析した。各温度における会合平衡定数、会合速度定数および解離速度定数を求めた。各々の温度依存性をvan’t Hoff式およびEyring式を用いて解析し、分子間相互作用の平衡および速度論的特性に関する熱力学的情報を得た。 上記の温度範囲において会合平衡定数は9.4~13.1 dm3 mol-1の値であった。van’t Hoffプロットの傾きから会合エンタルピーは7.6 kJ mol-1と求まった。また会合速度定数は7.7~8.4 dm3 mol-1 s-1であり、カラム温度の上昇と共にその値は僅かに増加した。しかし、Eyringプロットからは明確な熱力学的情報は得られなかった。一方、解離速度定数は0.58~0.90 s-1であり、カラム温度の上昇と共にその値は増加した。Eyringプロットの傾きおよび切片から、解離反応の活性化エンタルピーは7.3 kJ mol-1、活性化エントロピーは- 0.22 kJ mol-1 K-1と求まった。 上記のように、会合速度定数が顕著な温度依存性を示さないことはアミロース誘導体―2-ナフチルアミン(R体)間の分子間相互作用の特徴であると推察されるが、最終的な結論を得るためには実験結果の集積が必要である。本研究で開発したクロマトグラフィーを利用する分子間相互作用の解析法はこのような化学反応の特徴を解明する上で有効な解析手法であり、分離剤の機能表面を設計する上で有用な情報を与えるものと考えられる。
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