研究課題/領域番号 |
24550097
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
永谷 広久 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90346297)
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研究分担者 |
井村 久則 金沢大学, 物質化学系, 教授 (60142923)
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キーワード | デンドリマ- / 液液界面 / イオン移動 / 包接 / 電位変調分光法 |
研究概要 |
溶液内および分極された液液界面におけるデンドリマーのアニオン性ポルフィリン包接挙動について詳細な分光電気化学解析を行い、デンドリマー-ポルフィリン会合体の界面挙動を解明した。また、ペルオキソ二硫酸による化学処理によって強い蛍光性を付与したデンドリマーについて、金属イオンに対する検出試薬としての応答性を検討した。 デンドリマー-ポルフィリン会合体の形成により、ポルフィリンとプロトンの反応を抑制することができ、デンドリマーがポルフィリンの安定剤として機能していることを前年度までに見いだしている。種々の条件を詳細に検討した結果、相互作用しているポルフィリン分子はデンドリマーの内殻に包接されており、金属ポルフィリンに対しては中心金属への軸配位が会合体生成に強く寄与していることを確認した。このため、ポルフィリンの金属解離やプロトン付加が生じるpH 2程度の酸性条件においても、金属ポルフィリンと高い世代のデンドリマー間で形成された会合体は安定に存在することを確認した。それに対して、フリーベースと低い世代のデンドリマーの会合体は、相互作用したポルフィリン分子のプロトン付加が進行し、プロトン付加体のJ会合体の生成が促進されることを確認した。いずれのデンドリマー-ポルフィリン会合体も、アニオンの水相から有機相への移動が生じる負電位を印加すると、ポルフィリンが放出されてデンドリマーと解離し、相間移動を生じることを確認した。 化学処理で作成した蛍光性デンドリマーについて、各種の金属イオン共存下での蛍光強度変化を測定した。Ni(II)やZn(II)を添加してもデンドリマーの蛍光強度が変化しなかったのに対して、銅(II)イオン共存下では蛍光強度が明らかに減衰し、蛍光性デンドリマーが金属イオンと相互作用することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デンドリマーによる分子包接機能の評価については、デンドリマーと被包接分子の静電相互作用だけではなく、金属に対する配位が強く影響していることを確認した。また、化学処理によって作成した蛍光性デンドリマーについて、金属イオンによる蛍光消光が生じることを見いだし、金属イオンの検出試薬として応用できる可能性が示唆された。これらの反応性は、最終年度に実施予定のデンドリマーによる電気化学分離・検出反応への応用や環境感応型蛍光プローブの開発を進める上で非常に重要な機能であり、反応条件を最適化する上での指針となる。
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今後の研究の推進方策 |
(デンドリマーによる電気化学分離・検出反応への応用) 種々の官能基を有する水溶性薬剤分子とデンドリマーの相互作用について、液液界面における分配特性(イオン移動電位のシフト量)から定量的な評価を行う。薬剤分子の電荷に応じて、カチオン性のアミノ末端および水酸基末端デンドリマーとアニオン性のカルボキシ末端デンドリマーを使い分け、分子間相互作用の強さを評価する。生体内の薬物動態は細胞膜の膜電位に強く影響されるため、生体膜のモデル反応場である液液界面におけるイオン移動電位の変化を解析することで、ドラッグデリバリーシステムへの応用について検討する。また、デンドリマーの内殻にキレート試薬を包接させ、金属イオンの錯形成効率の向上と電位による相間分配制御を行う。キレート試薬には、デンドリマーとの構造類似性による包接安定性が期待でき、多様な金属イオンと錯形成するエチレンジアミン四酢酸を用いる。各種金属イオンに対する反応挙動を評価するとともに、水への溶解度が低い疎水性キレート試薬にも展開し、微量金属イオンの電気化学的分離に応用する。 (光機能化デンドリマーの高感度分光光度試薬としての機能評価) 光機能化デンドリマーに金属イオンまたは有機分子を包接させることで、高感度分光光度試薬としての機能性を評価する。また、これまでに作成した蛍光性デンドリマー(化学処理、金ナノドット包接)に加えて、蛍光性色素の化学修飾による光機能化に取り組み、デンドリマーの蛍光性の定量的な制御を試みる。 (高機能・低コストの多分岐高分子の探索) ハイパーブランチポリマーは、デンドリマーと同様の多分岐構造を有しており、安価で化学修飾も比較的容易と考えられるため、デンドリマーの代替物質として利用できれば大変有用である。各種ハイパーブランチポリマーについて、これまでの知見を踏まえた分子包接挙動を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な性能の物品・試薬を安価に購入することができ、出張旅費も抑制したため。 光学部品の置き換えによる測定システムの改良を行うとともに、研究対象とする反応系の拡張に用いる。
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