研究課題/領域番号 |
24550100
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山 宗孝 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90221861)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 空間修飾 / 非導電性保持材料 / サイクリックボルタンメトリー |
研究概要 |
本年度は、紙や繊維などの保持材料を用いた金属ナノ粒子修飾の展開として、まず、これまでの金ナノ粒子に加えて、白金ナノ粒子ではどのような修飾が可能か、また、電気化学応答にどのような変化が得られるかについて検討した。その結果、興味深いことに、電極近傍の空間に金属ナノ粒子を修飾した場合には、直接的な修飾とは大きく異なり、金属種に応じた電極触媒応答はほとんど見られずに、金と白金で可逆な酸化還元反応系に対してほぼ同様の電子移動促進応答が見られることがわかった。この結果は、空間内に分散した金ナノ粒子が主に電子移動を行う媒体としてのみ関与して基板電極の応答を本質的に変化させないことを示している。 また、保持材料を用いた金属ナノ粒子の応用に関する検討を開始し、特に、ミオグロビンの還元反応において特徴的な電気化学還元応答を得ることができた。現在のところ、ミオグロビンは溶液中への浸漬によって保持体内に修飾して検討しているが、その場合にも空間中の電子移動により特定の還元電流が得られることがこの結果よりわかった。また、この際も、修飾された金属の種類によって応答はそれほど影響されないことが、金属種を金と白金で変化させた返答の結果から明らかになった。 金ナノ粒子の修飾の場合には、これまで知られていない挙動として、フェロシアンイオンを対象として測定した場合に起こる吸着挙動について、反応種の濃度を変化させた詳細なサイクリックボルタンメトリー測定によって明らかにした。この結果は、電極酸化還元反応の基準物質として用いられる反応系でも、電極表面の状態によって単純な電子移動反応以外の相互作用を考慮すべきであることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初に検討に着手した金属種による応答の違いに関しては、かなり詳細に検討を進めることができ、その結果、種々の特徴的な電気化学反応系に適用しても、金と白金で大きな違いが無いことを実験結果から実証できた。この知見は、今回のような方式の電極での見かけの電子移動反応の促進を考察する上で極めて重要な情報であり、その点で研究の達成度としては評価できる。 しかし、この知見を得る以前の段階では、金属種による機能の変化も期待していたので、研究計画との整合性では、達成度は若干抑えて評価する必要がある。また、計画時にあげた他種の金属については、この結果を考慮して実際の検討を保留している。 その一方、代わりに早めて検討を開始したミオグロビンの修飾については、すでに前述のような成果を得ることができたうえ、この反応においても金属種の影響はほとんどないことを実証した。 これらの成果を総合的に評価すると、研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、ミオグロビンを対象とした電気化学測定において、電子移動反応種の保持方法を変化させた測定を行う予定である。具体的には、保持材料の中に修飾物質を金属ナノ粒子に共存させて保持させる方式に加えて、金属ナノ粒子を含んだ保持材料を電極表面に密着させる際に基板電極との間に挟み込んで固定する方式についても検討する。さらに、全く保持させずにバルク溶液から反応種が供給される場合とも比較検討して、ボルタンメトリーにおける金属とミオグロビンとの相互作用を明らかにする。 また、その成果をフィードバックして、ヘムタンパクを利用して過酸化水素を検出する系や、グルコースオキシダーゼを利用してグルコースセンサーを構築する系などにも保持材料による金属ナノ粒子の空間修飾を適用して研究を展開する。 さらに、初年度に検討できなかった基板電極の影響についても検討する。 また、これまでに保持材料としてキムワイプを中心とした紙類について検討してきたが、電極表面を部分的にしか覆わない綿ガーゼのような材料に金ナノ粒子を修飾した場合にも、充分な電子移動反応促進効果が得られることがわかたので、保持材料の材質・密度・厚み、さらには電極表面の被覆率・被覆様式などについても可能な限り検討して最適化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究をさらに進めるための消耗品費(金属試薬・生体関連試薬・電極および電極材料など)、および、初年度に得られた研究成果を報告するための旅費として主に使用する。
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