研究課題/領域番号 |
24550100
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山 宗孝 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90221861)
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 空間修飾 / 非導電性保持材料 / サイクリックボルタンメトリー / ミオグロビン |
研究概要 |
本年度は、まず、昨年度に作製法を確立した白金ナノ粒子修飾キムワイプを用いたグラッシーカーボン(GC)電極の特性について、金ナノ粒子修飾キムワイプの場合と比較しながら、より詳細に検討した。その結果、フェロシアン化物イオンの酸化還元応答が未研磨GC電極でも可逆に観測されるという挙動は白金ナノ粒子修飾と金ナノ粒子修飾で同様であったが、白金ナノ粒子修飾電極においては電流値が必ず増大する傾向が見られ、特に負側の電位においてその増大が顕著であることがわかった。この要因については、ルテニウムアンミン錯体の還元酸化掃引の場合にも同様の挙動が見られたため、白金ナノ粒子の方が金ナノ粒子に比べて電子移動を促進する効果があるものと考えられる。さらに、支持電解質のみを含む水溶液に対しても、負電位での還元限界付近での電流上昇は白金ナノ粒子修飾の場合に大きくなったので、酸化還元種によらず白金電極が電子移動を促進することがわかった。昨年までの検討では、これらの挙動については精査できていなかったが、金属種による有意な応答の違いがあることを明らかにできたので、他の電気化学反応系への適用を今後進めていく予定である。 また、ミオグロビンの還元挙動の検討に関しては、基質の固定化法による電気化学応答の違いに関して検討を開始した。具体的には、溶液中にミオグロビンを分散させて電気化学応答を測定するだけでなく、あらかじめミオグロビン溶液中に金属ナノ粒子修飾キムワイプを浸漬させることで、キムワイプ中でのミオグロビンの固定状況について検討した。その結果、キムワイプ単体ではミオグロビンはほとんど保持できないのに対して、金属ナノ粒子が存在すると、電極表面にミオグロビンを有効に保持して電気化学測定が行えることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属種による電気化学応答に関しては、本年度に再度精査した結果、白金ナノ粒子修飾と金ナノ粒子修飾で有意な違いがあることを明らかにできた。そのため、金属ナノ粒子の応用展開については今後さらに検討が必要であることがわかった。 また、ミオグロビンを対象として、当初計画にあった非導電性保持材料層中における固定化やその要因について、実際の電気化学応答を基に明らかにすることができた。そのため、研究は概ね順調に進展しているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ミオグロビンを対象とした電気化学測定において、保持材料の中に酸化還元物質を金属ナノ粒子と共存させて保持できる特性を活かして、今回の金属ナノ粒子空間修飾電極ではどの程度まで高感度に電気化学分析が行えるかについて検討する計画である。 また、その成果をフィードバックして、ヘムタンパクを利用して過酸化水素を検出する系や、グルコースオキシダーゼを利用してグルコースセンサーを構築する系などにも保持材料による金属ナノ粒子の空間修飾を適用して研究を展開する。 さらに、これまでは保持材料としてキムワイプを中心とした紙類について検討してきたが、電極表面を部分的にしか覆わない綿ガーゼのような材料に金ナノ粒子を修飾した場合にも、充分な電子移動反応促進効果が得られるので、保持材料の材質・密度・厚み、さらには電極表面の被覆率・被覆様式などについても可能な限り検討して最適化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
生体関連物質への応用に広く展開する計画であったが、基礎的な応答についても再度精査したため物品費の支出が少なかったのが主な理由である。 研究をさらに進めるための消耗品費(金属試薬・生体関連試薬・電極および電極材料など)、および、研究成果を報告するための旅費として使用する。
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