本年度は、主に、これまで検討してきた白金ナノ粒子空間修飾電極をミオグロビンの高感度電気化学分析へ応用するための検討を行った。通常のグラッシーカーボン電極では、溶液中に存在する 0.1 mM ミオグロビンの電解還元電流は観測できないが、白金ナノ粒子空間修飾電極を用いると、ナノ粒子が電極界面に存在することでミオグロビンの還元反応を促進し、その結果還元電流が明瞭に観測できることがわかった。 また、白金ナノ粒子空間修飾電極をミオグロビン溶液中に1時間浸漬し、それをとり出した後リン酸塩緩衝溶液のみでCV測定を行った結果、電極を溶液に入れた直後のサイクリックボルタモグラム(CV)ではミオグロビン溶液中での測定と変わらない電流値で還元ピークが観測できた。そのピークは時間経過とともに小さくなっていくが、その挙動から白金ナノ粒子修飾キムワイプは、ミオグロビンを効果的に保持する特性があることわかった。 そこで、ミオグロビンの保持効果を検証する目的で、0.01 mM および 0.001 mM ミオグロビン溶液中に白金ナノ粒子空間修飾電極を1時間浸漬してCV測定を行った。その結果、CVのピーク電流値は通常濃度に比例するが、今回の結果では 0.1 mM の場合と同様のミオグロビンの還元ピークが観測された。このことは、白金ナノ粒子空間修飾電極では、低濃度のミオグロビンに対しても白金ナノ粒子近傍へ効率良くミオグロビンを濃縮できることを示している。この原理に基づけば、濃縮時間を変化させることでミオグロビンの高感度分析が可能であるものと考えられる。 そのほかにも、非導電性保持媒体として綿ガーゼが利用できることや、白金ナノ粒子修飾キムワイプが直接電極表面に接合しないような場合でも、白金ナノ粒子の空間修飾効果が見られることを明らかにした。
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