研究課題/領域番号 |
24550102
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
渡辺 茂 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (70253333)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子 / ブロックコポリマー / 自己組織化 / ナノ粒子アレイ / 表面プラズモンセンサー |
研究概要 |
これまで高分子が自己組織化する数nm~数十nmレベルの規則構造を“自己組織化ナノ構造テンプレート”として金ナノ粒子を組織化し,局在表面プラズモンセンサーとして利用することを検討してきた.しかし,ごく限られた金ナノ粒子の組織化しか検討しておらず,作製した金ナノ粒子アレイが,センサーとして機能することを確認するに留まっている.そこで,その高感度化・高精度化に向け,種類,大きさ,形状の異なるナノ粒子の組織化,および色素をはじめとした有機-無機ハイブリッドナノ粒子アレイの作製について検討し,新たなナノバイオセンサーへの応用に向けて研究した.本年度は具体的には以下の項目を実施した. (1)金ナノ粒子の組織化 - 粒子サイズの影響について - 疎水性ポリスチレン(PS)と親水性ポリビニルピリジン(PVP)からなる両親媒性ブロックコポリマー(PS50000-b-PVP13000)のトルエン溶液を基板上にスピンコートし,50 nmの構造周期を有するミセルテンプレートを作製した.これを粒径の異なる金ナノ粒子水溶液に浸漬し,テンプレート上に金ナノ粒子を組織化した.これまでに粒径が10 - 20 nmの金ナノ粒子については,各ミセル上に金ナノ粒子が組織化することを確認しているが,テンプレートの構造周期よりも粒径が大きな80 nm以上の金ナノ粒子についても,比較的規則正しくテンプレート上に組織化できることがわかった. (2)金/銀合金ナノ粒子の組織化 - 粒子の種類の影響について - 銀は,金よりも化学的に不安定で酸化され易いが,センサー感度に優れている.そこで,金/銀合金ナノ粒子を調製し,その水溶液中にミセルテンプレートを浸漬させた.AFMの観察結果から,粒径が20 nm以下の金/銀合金ナノ粒子であれば,金ナノ粒子と同様に各ミセル上に組織化できる可能性が高いことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにミセルテンプレート法を用いて,粒子サイズが20 nm以下の金ナノ粒子を組織化するナノ集積化技術を確立している.本研究では,粒子サイズのより大きな80 nm以上の金ナノ粒子や金以外の金/銀ナノ粒子についても組織化できることを突きとめ,ナノ粒子の種類や大きさなどミセルテンプレート法の適用範囲を順調に拡大させており,ナノ集積化技術の高度化については概ね計画通りに進んでいる.また,これらナノ粒子アレイを局在表面プラズモンセンサーとして応用することについても検討し,従来の金ナノ粒子アレイよりもセンサー感度が向上する予備的研究成果を得た. さらに,ナノ粒子とともに色素をナノ空間内に精密に組織化する複合ナノ集積化技術についても,一部実現しており,“色素-プラズモン共鳴”に基づく増感現象を確認するのみとなっている.
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今後の研究の推進方策 |
高分子が自己組織化する数nm~数十nmレベルの規則構造を“自己組織化ナノ構造テンプレート”として,各種色素や金属ナノ粒子を簡便かつ迅速な操作でナノパターニングするナノ集積化技術を開発する.また,色素と金属ナノ粒子間に作用するエネルギー移動に着目し,“色素-プラズモン共鳴現象”に基づく超高感度な“分子-局在表面プラズモン共鳴・ナノアレイセンサー”を開発する.次年度は具体的には以下の項目について検討する. (1)“リアクティブ・ナノテンプレート法”の開発 ミセルテンプレートの高次構造周期を利用した巨大金ナノ粒子(粒径>100 nm)の配列方法を確立する.また,色素を局在化させるブレンドやドーピング方法について検討し,色素やナノ粒子をナノ空間に精密に配列・集積・組織化する方法について検討する. (2)“色素増感型ナノアレイセンサー”の開発 粒子表面に色素を担持させた金ナノ粒子アレイを作製し,色素の表面密度や光学的特性と色素-プラズモン共鳴現象の相関関係について明らかにする.増感作用を発揮する機能構造をつきとめ,共鳴効果を通じて,金ナノ粒子の吸収・散乱スペクトル変化を増大させる有機-無機ハイブリッドナノ粒子アレイセンサーを開発する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,購入を予定していた金ナノ粒子が,メーカーの無償提供によって購入する必要がなくなった.また,大量に消費すると予想していたAFMのカンチレバーも予定使用量を下回り,年度内に新たに追加購入する必要がなかったことが,次年度に使用する研究費が生じた主な理由である.しかし,これらはいずれも消耗品であり,平成25年度には予定している他の消耗品とともに適時購入する.
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