研究課題/領域番号 |
24550102
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
渡辺 茂 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (70253333)
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キーワード | 金ナノ粒子 / ブロックコポリマー / 自己組織化 / ナノ粒子アレイ / 表面プラズモンセンサー |
研究概要 |
金や銀などの金属ナノ粒子は,局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に起因した吸収・散乱スペクトルを示し,そのスペクトルが粒子近傍の環境変化に敏感に応答することから,高感度なナノバイオセンサーへの応用が期待されている.これまでに両親媒性ブロックコポリマーが自発的に形成するナノレベルの規則構造を“自己組織化ナノ構造テンプレート”として,簡便に金ナノ粒子を配列する自己組織化技術を開発し,作製した金ナノ粒子アレイがLSPRセンサーとして生体分子の検出に利用できることを明らかにした.本年度は,その高感度化・高精度化に向け,銀ナノ粒子の組織化および有機-無機ハイブリッドナノ粒子アレイの作製について検討し,新たなナノバイオセンサーへの応用に向けて研究した.具体的には以下の項目を実施した. (1)銀ナノ粒子の組織化とセンサー機能評価 作製した金ナノ粒子アレイに無電解銀メッキを施し,銀ナノ粒子アレイを作製した.さらに,ビオチン-アビジン系を利用して,銀ナノ粒子アレイのセンサー機能を評価した.粒子表面にビオチンを固定化した後,HEPES緩衝液中アビジンを添加し,銀ナノ粒子の吸収スペクトル変化を観察した.アビジンの濃度が増すに従ってLSPRバンドの強度が増加し,スペクトル変化を通じてアビジンを検出できることがわかった.また,金ナノ粒子アレイよりもセンサー感度が向上することがわかった. (2)表面プラズモン蛍光増強効果の確認 ガラス基板上に蛍光色素層と中間層を設け,その上に金ナノ粒子アレイを作製し,蛍光色素層と金ナノ粒子アレイ間の距離を変えながら蛍光強度を測定した.蛍光強度は,金ナノ粒子が蛍光色素層から近いところに配置されているときには,金属消光によって低下し,遠いときには全く変化が見られなかった.しかし,適度な距離に配置したとき蛍光強度が増加することをつきとめ,表面プラズモン蛍光増強効果を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにミセルテンプレート法を用いて,粒子サイズが20 nm以下の金ナノ粒子を自己組織化するナノ集積化技術を確立している.本研究では,金よりもセンサー感度に優れる銀ナノ粒子アレイの作製について検討し,金ナノ粒子に無電解銀メッキを施すことで銀ナノ粒子アレイを作製する方法を開発した.金属種の異なるナノ粒子の組織化を実現するなどミセルテンプレート法の適用範囲を順調に拡大させており,ナノ集積化技術の高度化については概ね計画通りに進んでいる.また,新たに作製した銀ナノ粒子アレイは,これまでに作製した金ナノ粒子アレイよりもセンサー感度に優れており,より高感度な局在表面プラズモンセンサーの作製についても計画通りに進んでいる. さらに,ナノ粒子とともに色素をナノ空間内に精密に組織化する複合ナノ集積化技術についても実現し,“色素-プラズモン共鳴”に基づく増強効果を確認した.“色素-プラズモン共鳴現象”に基づく“分子-局在表面プラズモン共鳴・ナノアレイセンサー”の開発に向け,センサー機能を確認するのみとなっており,当初の計画通りに進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
高分子が自己組織化する数nm~数十nmレベルの規則構造を“自己組織化ナノ構造テンプレート”として,各種色素や金属ナノ粒子を簡便かつ迅速な操作でナノパターニングするナノ集積化技術を開発する.また,色素と金属ナノ粒子間に作用するエネルギー移動に着目し,“色素-プラズモン共鳴現象”に基づく超高感度な“分子-局在表面プラズモン共鳴・ナノアレイセンサー”を開発する.次年度は具体的には以下の項目について検討する. (1)“色素増感型ナノアレイセンサー”の開発 粒子表面に色素を担持させた金ナノ粒子アレイを作製し,色素の表面密度や光学的特性と色素-プラズモン共鳴現象の相関関係について明らかにする.ラビ分裂現象を発現する機能構造をつきとめ,共鳴効果を通じて金ナノ粒子の吸収・散乱スペクトル変化を増大させる有機-無機ハイブリッドナノ粒子アレイセンサーを開発する. (2)“粒子増感型”ナノアレイセンサーの開発 蛍光色素層上に金ナノ粒子アレイを作製し,色素層の膜厚や光学的特性と色素-プラズモン共鳴現象の相関関係について明らかにする.増強強化の確認できた色素/金属ナノ粒子複合アレイを用いて,粒子表面で進む分子認識現象を蛍光色素の蛍光スペクトル変化として検出できるか検討し,有機-無機ハイブリッドナノ粒子アレイセンサーを開発する.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していた金ナノ粒子が,メーカーの無償提供によって購入する必要がなくなるなど,一部消耗品の購入費用を節約できたことが,次年度に使用する研究費が生じた主な理由である. 消耗品の購入,および研究を遂行する上で不可欠な分析機器の維持管理および修理費として使用する予定である.
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