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2013 年度 実施状況報告書

アスベスト分解生成物中の硫黄の酸化状態同時分析法の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24550103
研究機関佐賀大学

研究代表者

田端 正明  佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40039285)

研究分担者 西本 潤  県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (80253582)
キーワードアスベスト / 常温分解 / 硫黄高分子電解質溶液 / 硫黄の酸化状態 / クリソタイル / クリシドライト / 白石綿含有建材 / 青石綿含有建材
研究概要

①前年度の標準アスベストの常温分解の結果に基づいて、アスベスト含有建材(吹き付けアスベスト)を対象に、多硫化カルシウムによるアスベストの分解を調べた。
クリソタイルを含む白石綿建材とクロシドライトを含む青石綿建材のそれぞれに多硫化カルシウム溶液を加え、密閉容器中でボールミルを用いて常温処理した。分解物を粉末X線回折(XRD)および偏光顕微鏡分散染色法で調べた。その結果、クリソタイルを8~10%含有する白色綿建材は5時間で完全に分解した(含有率0.1%以下)。しかし、クロシドライトを含有する青石綿建材は10時間から20時間の反応を要した。しかも、第一ピーク近傍には帰属不明のピークが残った。しかし、反応後そのまま放置養生し、酢酸アンモニウム(0.1M)溶液で洗浄すると不明のピークは完全に消失した。クロシドライトは鉄を含有するために硫黄との反応が起こり分解に時間がかかると考えられる。XRDの測定では、いずれのアスベスト含有建材でも、アスベスト由来のピークは完全に消失した。代わりに、反応生成物として硫黄、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムのピークが出現した。
②アスベスト分解剤の溶液のXANES分光スペクトルと動的光散乱(DLS)を測定して、処理剤の硫黄の溶液状態を調べた。XANES分光スペクトルは、硫黄(S)の状態であり、硫化ナトリウム溶液とは著しく違っていた。ゼータ電位は-97.4mVであり、粒子の大きさは8.2マイクロmであったので、負の電荷を持つ可溶性の大きな粒子、即ち、高分子電解質であることが分かった。
③アスベスト建材の分解過程における硫黄の酸化状態の変化を知るためにX線吸収端近傍構造(XANES)分光スペクトルを測定した。硫黄の高分子電解質溶液が反応時間とともにS → SO32- → SO42-と徐々に撹拌ポット中で酸化されていることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①前年度の標準アスベストの常温分解法に基づいて、クリとタイルまたはクロシドライトを含む白石綿あるいは青石綿吹付アスベスト建材を常温分解をすることができた。
②アスベスト分解剤の溶存状態と酸化状態を決定することができた。
③アスベストの分解過程で硫黄が密閉容器中でも徐々に酸化していることが明らかになった。硫黄の還元状態における化学種を酸化状態から決定できた。

今後の研究の推進方策

①硫黄の酸化状態の変化とアスベスト繊維の分解過程との関係を明らかにし、アスベスト常温分解反応機構を提案する。
②硫黄の酸化状態の変化がなぜアスベスト繊維の分解をもたらすかを考察する。
③硫黄の酸化過程をアスベスト分解反応でとらえることができたので、逆に硫化ナトリウムの還元反応過程を還元状態での硫黄の酸化数の変化を明らかにする。
④そのために、海底の底泥を採取し、そこに含まれる硫黄の酸化状態をXANES法で研究する。
⑤このようにして、硫黄の酸化と還元の両方から酸化状態と化学種を明らかにする。
特に、貧酸素塊における硫化水素発生を暗示する化合物を決定する。

次年度の研究費の使用計画

・シンクロトロン光利用施設のトラブル及び測定上の問題点が起きたので利用計画が予定より少なくなった。本年度の測定に回した。
・外国からの標準物質の納入に時間がかかった。
・シンクロトロン測定時に起きた測定法の問題を解決するために、シンクロトロンの測定回数を増やす。
・標準物質を早急に購入する手続きはじめる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Efficient DDT and trichlorophenol detoxification using NaBH4 and Devarda alloy2013

    • 著者名/発表者名
      Abdul Ghaffar, Masaaki Tabata, Azhar Mashiatulah and Abdulaziz S. Alaamer
    • 雑誌名

      Environmental Chemistry Letters

      巻: Volume 11, Issue 2 ページ: 197-202

    • DOI

      10.1007/s10311-012-0397-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Small-Angle Neutron Scattering Study on Aggregation of 1-Alkyl-3-methylimidazolium Based Ionic Liquids in Aqueous Solution2013

    • 著者名/発表者名
      Takumi Kusano, Kenta Fujii, Masaaki Tabata and Mitsuhiro Shibayama
    • 雑誌名

      J. Solution Chem.

      巻: 42 ページ: 1888-1901

    • DOI

      10.1007/s10953-013-0080-0

    • 査読あり
  • [学会発表] 混合溶媒の微視的溶媒構造変化とニッケル(II)の錯形成反応速度2013

    • 著者名/発表者名
      田端正明、馬場政行、後藤栄志
    • 学会等名
      錯体化学第63討論会
    • 発表場所
      琉球大学
    • 年月日
      20131102-20131104
  • [学会発表] 有明海底泥中の硫黄化合物の酸化様態直接分析2013

    • 著者名/発表者名
      田端 正明、西本 潤、岡島 敏浩
    • 学会等名
      日本分析化学会第62年会
    • 発表場所
      近畿大学
    • 年月日
      20130910-20130912
  • [学会発表] Determination of Oxidation States of Sulfur in Solid Samples2013

    • 著者名/発表者名
      Masaaki Tabata and Toshihiro Okajima
    • 学会等名
      Asianalysis XII
    • 発表場所
      Kyushu University, Fukuoka, Japan
    • 年月日
      20130822-20130824

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公開日: 2015-05-28  

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