研究課題
本研究の目的は、常温でアスベスト繊維を多硫化カルシウム溶液と混合撹拌することでアスベストを分解し、分解生成物中の硫黄化合物の酸化状態の分析からアスベストの分解機構を明らかにすることである。そのために以下の実験を行い次のことが明らかになった。1. 標準アスベスト(クリソタイル、クロシドライトなど)に多硫化カルシウム溶液を5%~2%加え、ボールミルで5時間~24時間撹拌反応させた。一定反応時間毎に試料を採取し、粉末X線回折(XRD)、位相差偏光顕微鏡分散染色法、走査型顕微鏡法(SEM)で分解生成物を同定した。アスベスト繊維特有の第一ピーク(10~12度)は完全に消失し、代わりに炭酸カルシウムと硫黄化合物が生成した。アスベスト繊維を含む吹き付けアスベストやスレートでもアスベスト繊維は分解した。但し、スレートでは分解時間が長くなった(約21時間)。2. アスベストのピークが減少するととともに、分解生成物中の硫黄化合物はS → S2O32-→ SO32- → SO42- と変化し、硫黄の酸化数が増大した。分解剤がアスベスト繊維の間隙に浸透し、回転撹拌によってSO42-が生成する。SO42-(2.44 A)の生成によってアスベスト繊維の間隙が膨張し歪み、回転撹拌によって破壊すると考えられる。水をアスベスト繊維に浸透させ、液体窒素で冷却後ボールミルで撹拌すると、12時間後アスベスト繊維は分解した。これは、先の硫黄化合物の間隙への挿入による膨張破壊の現象と同一である。3. 有明海の底泥を採取し、同様に硫黄の酸化状態を分析した。有明海の西沿岸では夏季に硫黄(S) と硫化鉄(FeS)が生成し、冬には消滅した。有明海西沿岸での貧酸素塊の発生と一致した。貧酸素塊ではNaSO4 →S →FeSと硫黄の還元反応が進んでいることが明らかになった。FeSがH2S発生の前駆体と考えられる。
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