本年度は、多種類の検出モードで多成分の分析が可能となるように、検出用の電極材料の検討、酸化還元物質ばかりでなく酸物質の定量法の構築、疎水性の異なる抗酸化物質が測定できる多チャンネル測定システムの構築を行った。 検出用の電極材料の検討においては、検出可能物質を拡張するため高電位側の電気化学検出が見込まれるダイヤモンド電極を取り扱った。ダイヤモンド電極を用いたボルタモグラム上に、グルコース及びアラニンなどの12種のアミノ酸について明瞭な酸化波が現れ、電気化学検出が可能であることが分かった。また、ダイヤモンド電極を用いたノビレチンとタンゲレチンの電気化学検出が可能であった。電気化学検出キャピラリーLCを構築して、シークワーサージュース投与後のラット血中のノビレチンの動態分析が可能であった。 酸の検出には、キノン試薬を用いた還元前置波による電流検出方式を採用した。ドコサヘキサエン酸とエイコサペンタエン酸を分析対象として電気化学検出HPLCによる定量を行った。定量範囲0.75μmol/L~0.1 mmol/L、併行精度2.9%RSD以下で実用性に優れた方法が確立できた。 疎水性の異なる抗酸化物質への適用を可能とするため、昨年度の多チャンネル測定システムの改良を行い、中医薬中の11種の抗酸化物質の分離定量を行った。クロロゲン酸類、フラボノイド類、フェニルエタノイド配糖体など疎水性の異なる抗酸化物質は、動脈硬化に効果のあるオウゴンやレンギョウを含む中医薬双黄連に含まれる生理活性物質である。3チャンネル電気化学検出HPLCシステムは、ポンプ3基、カラムスイッチングバルブ2基、ODSのプレカラム1本、分離カラム3本につきそれぞれ接続した電気化学検出器3基を備える3流路方式である。11種の測定対象の一斉分析における定量限界は0.11~0.90 ng/mLの範囲で高感度であった。
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