研究課題/領域番号 |
24550107
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
飯田 隆 日本大学, 文理学部, 教授 (60060125)
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キーワード | SLOS症候群 / LC-MS/MS / 異常胆汁酸 / 先天性コレステロール代謝異常症 / Mass Bank |
研究概要 |
本研究の目的は、肝におけるコレステロール代謝異常による先天性奇形疾患であるスミス-レムリ-オピッツ症候群(Smith-Lemli-Opitz Syndrome:SLOS)を対象とし、本疾患の特異的指標(疾患バイオマーカー分子)として期待される異常胆汁酸(abnormal bile acid)の代謝産物標品の化学合成を行うと共に、液体クロマトグラフィー-タンダム質量分析(LC-MS/MS)法を用いるメタボローム解析を行い、本疾患早期発見と確定診断に寄与することにある。 SLOS疾患は胎児、新生児において重篤な疾病であり、その早期発見と対症療法が極めて重要視されているものの、本疾患のバイオマーカーの特定とメタボリックプロファイリングは確立されておらず、その解明が焦燥の急務課題とされている。本研究は特にSLOS疾患に対象を絞り、その包括的な化学的診断法システムを構築し、広く臨床の場に提供しようとするものである。なお、SLOS疾患は肝において、7-デヒドロコレステロール前駆体からコレステロールへの変換を司る生合成最終過程で作用する酵素の欠損あるいは活性低下に 起因することから、7-デヒドロコレステロール レダクターゼ欠損症(Dhcr7)とも称される。 平成25年度はリトコール酸から1,3-ジヒドロキシ-5,7-コラジェン酸の合成中間体である1,3-ジヒドロキシ-5β-コラン酸の化学合成を高収率・高選択的で達成した。引き続き、実施計画に基づき1,3-ジヒドロキシ-コレスタン-5,7-ジエン、3,5-ジヒドロキシ-コレスタン-7-エン等、SLOS疾患に特異的な指標として期待される疾患バイオマーカー分子を高度な有機合成化学的手法を用いて調製することを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、当初予定の標的化合物全ての化学合成には至っていないが、1,3-ジヒドロキシ-5,7-コラジェン酸の合成中間体である1,3-ジヒドロキシ-5β-コラン酸及びその関連化合物の化学合成を達した。これらの研究成果は学術論文として投稿準備を行っていると共に、LC-MSスペクトルデータは日本質量分析化学会のMSデータベース(MassBank)に登録し、世界に発信・公開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
化学合成の終了した化合物から順次LC-MS/MS法による信頼度の高いメタボリックプロファイリングを本疾患者の尿試料との対比・検討する予定である。 次いで、それらの情報を基にそれぞれの化合物について最適なプリカーサーイオンスキャンやニュートラルロススキャンを生じる条件を見出す。さらに標的化合物を用いてグラジェント分析に付し、至適な分離分析条件を検討する。さらに、保持時間とm/zによる二次元マップを作成し、各化合物のスポットを確認する。これらのメタボリックプロファイリングを基盤として、特にSLOS疾患の簡易かつ高感度な化学的確定診断法の確立に繋げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
ガラス器具の破損が少なく、消耗品の節約も行い予定よりも費用を使わずに済んだため。 繰り越し分の研究費はろ紙やマイクロチューブ等の消耗品の購入に充てる。次年度の研究費は全て試薬(無水酢酸、水酸化ナトリウム等)や溶媒(酢酸エチル、メタノール等)、ガラス器具(ナス型フラスコ、三角フラスコ等)の購入に充てる予定である。
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