研究課題/領域番号 |
24550109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
呉 行正 福岡工業大学, 工学部, 教授 (70234961)
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研究分担者 |
井上 智美 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (80435578)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 物質輸送 / 偏向測定 / 植物 / 蛍光 / 吸光度 |
研究概要 |
1.植物体表面における生理的物質の輸送のビーム偏向・蛍光・吸光度測定系の作製: 測定系は、ブルーレーザーダイオード(波長445nm)をプローブ光及び蛍光・吸光度測定用の光源として使用した。そのレーザー光をまずダイクロミラーを通し、レンズによりセル中の植物表面近傍に絞った。セルから出てくるプローブ光はもう一個のレンズにより、位置検出器の中心に絞った。植物体表面近傍の蛍光はダイクロミラーにより反射され、ピーンホール/フィルター/PMTにより測定される構造になっている。共焦点方式の蛍光測定なので、植物体表面近傍の蛍光だけが測定されている。植物体入れのセルはX-Y-Zステージに乗せ、植物体の任意部位の表面近傍にプローブ光を通すように調整した。また、セルに植物の培養液(Hoagland 培養液等)を入れている。蛍光強度はPMTにより測定される。また、位置検出器により偏向信号を測定している。蛍光強度、吸光度、偏向信号はマルチチャンネルデジタルマルチメーターにより検出し、パソコンで保存されている。 2. 植物体を用いた測定系の有用性の実証: 水草アナカリスを用い、試作した装置系の有用性を実証した。1) 偏向信号、蛍光、吸光度のバックグランド測定: プローブ光が空気、Hoagland 培養液中を通る際の偏向信号、蛍光、吸光度のバックグランド及び、その変動範囲をそれぞれ測定した。2)植物体表面近傍の偏向信号、蛍光、吸光度の同時モニタリング: 水を含有するセルにアナカリスを入れ、プローブ光をアナカリスの近傍を通し、偏向・蛍光・吸光度を同時にモニタリングした。水で植物体から蛍光性及びプローブ光を吸収する物質の放出があるかどうかを検討したところ、今のところ、まだ検出されていない。また、光照射下と暗室での偏向信号の測定結果を比較し、光合成と呼吸過程の違いを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までの研究成果に基づいて設計し、またメーカーと十分な打ち合わせをした上で、ビーム偏向・蛍光・吸光度測定系を作製した。さらに植物体の測定に応用している。性能的には当初目指したものをほぼ確認され、さらに最適化も行っている最中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はほぼ当初計画通りに実行していく。具体的には、水草アナカリスなどの植物体表面におけるO2輸送の選択的測定を行う。酸素はルテニウム錯体の蛍光を消光することが知られているので、培養液に10-5M程度のルテニウム錯体を添加し、その蛍光消光をモニタリングすることにより、根表面近傍のO2濃度の時間変化を計測する。同時に濃度変化を反映する偏向信号も測定する。これらの測定結果から、アナカリス等植物表面におけるO2の出入り過程を定量的に計測する。また、光照射下のO2放出速度(光合成速度)及び暗室でのO2吸収速度(呼吸速度)をそれぞれ測定する。更に、偏向信号と蛍光・吸光度信号との比較から、O2以外の物質の輸送情報も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はほぼ計画通りに実行してきたので、蛍光性試薬などの一部の消耗品を前倒して購入し実験した。その結果、研究費は-275,540円を生じた。 次年度研究費110万円の使い分けは、今年度使い込んだ275,540円を除いて、10万円を研究分担者に配分し、残りは試薬、植物体などの消耗品(40万円前後)と学会発表などの旅費(30万円前後)に使用する。
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