研究実績の概要 |
不斉合成反応は有機合成化学の分野における中心的研究課題の一つである。平成 24年度、平成25年度において、キラルなジオール、1,2-ビス(1-ヒドロキシアルキル)ベンゼン、およびキラルなジオールから誘導されるキラルなアミノアルコール類の合成法を確立し、それらを不斉反応剤あるいは不斉触媒として活用することにより、キラルな二置換オルトキシリレン骨格が不斉誘起に有効であることを明らかにした。 一方、遷移金属錯体を用いる触媒反応は活発な研究が行われており、近年含窒素複素環式カルベン(NHC)配位子が注目されている。キラルなNHC配位子を用いた不斉触媒反応も報告されているが、キラルな二座カルベンを用いた例は少ない。そこで、(S,S)-1,2-ビス(1-ヒドロキシプロピル)ベンゼンから、対応するキラルジアミンを経て6段階でキラルなビスイミダゾリウム塩、1,1'-(1R,1'R)-1,1'-(1,2-フェニレン)ビス(プロパン-1,1-ジイル)ビス(3-ベンジル -1H-ベンゾ[d]イミダゾリウム-3-イウム)としたのち、反応系内でビスカルベンを発生させPd錯体を調製した。得られたPd触媒存在下、酢酸(E)-1,3-ジフェニルアリルとマロン酸ジメチルの反応を行ったところ、(E)-2-(1,3-ジフェニルアリル)マロン酸ジメチルが96%、81%eeで得られ、キラルなNHC配位子が有効であることが分かった。 また、ジベンゾ[b,d]フラン-4,6-ジカルバルデヒドを出発物質として、上記と同様の手法を用いることにより、対応するキラルジオール、ジアミンを合成し、キラルな反応試薬としての活用について検討を行った。その結果、(1R,1'R)-1,1'-(ジベンゾ[b,d]フラン-4,6-ジイル)ジプロパン-1-アミン誘導体がNMRのキラルシフト試薬として有効であることが分かった。
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