研究課題/領域番号 |
24550116
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
菅 博幸 信州大学, 工学部, 教授 (60211299)
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キーワード | 付加環化 / ジアゾ化合物 / キラルルイス酸 / エナンチオ選択性 / 生理活性 / カルボニルイリド / アゾメチンイリド |
研究概要 |
前年度までに,N-ジアゾアセチルラクタム誘導体を前駆体として発生させた環状カルボニルイリドと3-(2-アルケノイル)-2-オキサゾリジノンとの不斉付加環化反応を検討し,5,6,7員環ラクタム部を有するジアゾ化合物を基質とし,キラルなビス(オキサゾリニル)ピリジン-ランタニド金属錯体(10 mol%)存在下に反応を行うと,良好なエナンチオ選択性(up to 95% ee)でexo-付加体が選択的に得られること明らかにした. 本年度はCastanospermineやSwainsonineなどの光学活性インドリジジン天然物にみられる多酸素置換誘導体の不斉合成法の開発に関する検討として,引き続き,3-アセトキシプロペノイルオキサゾリジノン誘導体との不斉付加環化反応を検討したところ,78-81% eeの比較的良好なエナンチオ選択性でエポキシ架橋をもつexo-付加体が選択的に得られることを見出した.また,N-ジアゾアセチル-2-ピロリジノンとの反応で得られた付加体は,メチルエステルへの誘導,7位水酸基のTBS保護体への変換,続くWeinrebアミドへの誘導が可能であることを明らかにした.更に,Weinrebアミド誘導体をDIBALにより処理すると,Weinrebアミドを損なうことなく立体選択的にエポキシ架橋を開環することができ,6,7-ジヒドロキシ-8-アセチルインドリジジン誘導体へ変換できることを明らかにした.一方,3-アクリロイル-2-オキサゾリジノンを親双極子剤とするexo-付加環化体は,p-ブロモベンジルエステルへ誘導およびエポキシ架橋開環とBaeyer-Villiger酸化を経由して立体保持でのアセトキシ官能基への変換に成功した.また, 8-アセトキシ誘導体を水素化アルミニウムリチウムで還元すると光学活性6,8-ジヒドロキシインドリジジン体が得られることも明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
N-ジアゾアセチルラクタム誘導体を前駆体として発生させた環状カルボニルイリドの不斉付加環化と得られたエポキシ架橋付加環化体を用いる多酸素官能化インドリジジン誘導体の合成に関しては,光学活性な6,7-ジヒドロキシ-8-アセチルインドリジジン誘導体や6,8-ジヒドロキシインドリジジン体の合成に成功している.また,(S)-3-t-ブチルジメチルシリルオキシ-N-ジアゾアセチル-2-ピロリジノンより発生させた環状カルボニルイリドと3-アセトキシプロペノイルオキサゾリジノン誘導体との付加環化反応は,ルイス酸非存在下において,生成可能な4種のジアステレオマーの内1種類のexo-付加体が93%のジアステレオ選択性で選択的に得られることを見出しており,X線結晶構造解析によりその立体構造を明にした.この付加環化体のWeinrebアミド誘導体への変換にも成功しており,標的化合物であるDeoxycastanospermine,CastanospermineおよびSwainsonineの合成に向けて必要な鍵反応に関する有望な結果を得ている.環状カルボニルイリドとインドール誘導体との不斉付加環化反応に関しては,ジアゾ基質として1-アセチル-1-ジアゾアセチルシクロプロパン誘導体を基質とする検討を行い,収率はあまり高くないものの78%程度のエナンチオ選択性で,endo-付加体(endo : exo = 81 : 19)を選択的に得ることに成功している.ジアゾイミン誘導体をアゾメチンイリド前駆体とする反応に関しては若干のジアゾ基質一般性の拡張を行い,進展がみられている.
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今後の研究の推進方策 |
ジアゾイミド誘導体をカルボニルイリド前駆体とする反応の検討に関しては,鍵反応として重要な立体選択的エポキシ架橋開環反応やBaeyer-Villiger酸化を経由する立体保持でのアセトキシ官能基への変換に成功し,6,7-ジヒドロキシ-8-アセチルインドリジジン誘導体や6,8-ジヒドロキシインドリジジン体への変換が可能であることを明らかにしたので, この方法を応用してDeoxycastanospermineおよびCastanospermineの合成へ向けて精力的に取り組みたい.環状カルボニルイリドとインドール誘導体との反応およびジアゾイミン誘導体をアゾメチンイリド前駆体とする反応に関しては,反応を充分活性化させるための触媒の改良に取り組みとともに更なる基質一般性を検討し,最終年度のまとめを行う予定である.
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