研究概要 |
本研究課題では、まず、不斉閉環メタセシス反応により合成した面不斉アレーンクロム錯体を活用し、面不斉ホスフィン配位子の合成を行った。このホスフィン配位子は、ロジウム触媒を用いた不斉1,4-付加反応において、非常に高いエナンチオ選択性を示すことが分かっており、その誘導体の合成により、基質一般性の高い配位子の創製を目標として検討を行った。その結果、P(xylyl)2をアレーン上に有する配位子において、さらなる選択性の向上が確認された。また、この配位子は、ホスフィンに加えて、隣接するオレフィン部位が遷移金属に配位可能であり、二座配位子として機能していることが、ロジウムと配位子との錯体における単結晶を作製し、X線結晶構造解析を行うことにより確認することができた。 次に、面不斉についてプロキラルな1-置換, 2,6-ジプロペニルアレーンクロム錯体に対して、不斉閉環メタセシスによる非対称化を行うことにより、面不斉アレーンクロム錯体の触媒的不斉合成を行った。この際に、1位における置換基として、N-インドリル置換基を導入した錯体では、面不斉に加えて、炭素ー窒素間における軸不斉が発生する。従って、不斉非対称化操作によって、面不斉のみならず、C-N軸不斉をも同時に誘起することができる。実際にこの基質を用いて検討を行ったところ、非常に高いエナンチオ選択性 (99%ee)にて生成物を合成することに成功した。
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