研究課題/領域番号 |
24550121
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
神川 憲 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40316021)
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キーワード | 面不斉 / 閉環メタセシス / クロム錯体 / 不斉配位子 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、面不斉アレーンクロム錯体を基盤とした触媒的不斉合成に関する研究を検討した。既に我々は,アルケニル部位をベンゼン環上とホスフィン上にもつラセミ体の面不斉アレーンクロム錯体に対する触媒的不斉閉環メタセシスにより、高い立体選択性で環化体のアレークロム錯体を光学活性体として合成できることを見いだしている。また、その際に得られた光学活性(アレーン)クロム錯体を用いて、芳香環上にホスフィノ基を導入した錯体を、ロジウム触媒を用いた不斉1,4-付加反応におけるキラル配位子として用いたところ、99%eeを超える非常に高い選択性で対応する付加生成物を与えることを見いだした。そこで今回我々は、予期せず得られたこのアレーンクロム錯体配位子をより簡便に、かつ様々な誘導体が得られる合成ルートの開拓を目指して検討を行った。 すでに合成法が確立されている光学活性ブロモ置換アレーンクロム錯体から出発し、Grubbs II触媒を用いる閉環メタセシス反応により、様々な置換基をもつアレーンクロム錯体配位子ライブラリーの構築に成功した。また、これらの配位子が非常に高い立体選択性を示す要因として、1)ホスフィン以外にも側鎖のオレフィンの存在が重要である。2)側鎖の環構造が配座の固定に重要である、ことを見いだした。さらに、このようにして合成した配位子ライブラリーの中から、さらにより高い選択性を与える配位子を見いだすことに成功し、それを用いて、他の基質との不斉1,4-付加反応を検討したところ、いずれの基質に於いても99%eeを超える非常に高い立体選択性で対応する生成物を合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々は、当初不斉閉環メタセシス反応による光学活性アレーンクロム錯体の合成に、研究の中心をおいていたが、その研究の過程で、予期せず従来の配位子を凌駕するすぐれた配位子の合成を行うことができた。それらの配位子を用いて得られる不斉1,4-付加反応による生成物の光学純度は世界一のレベルにある。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまで、面不斉アレーンクロム錯体を触媒的不斉閉環メタセシス反応により、光学活性体として合成する手法の開発について検討を行って来た。これに対して、今後はリン原子上の置換基との不斉閉環メタセシス反応で不斉非対称化操作を行い、同じアレーンクロム錯体のプラットフォームからP-キラル化合物の合成まで完了させることを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回は、大学公費および共同研究費等の予算で汎用的に用いる試薬や溶媒の購入をまかなうことが できたため。 最終年度は、前年度に使わなかった予算で、貴金属触媒の購入を予定している
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