研究課題
ホモアリル型アルコールのアリル残基が、酸触媒存在下にアルデヒドをアリル化し新たなホモアリルアルコールを合成することができることを発見しAllyl-Transfer反応と命名した。本反応で、不安定な金属アリル化剤ではなく安定な炭素アリル化剤によるアルデヒドの実用的な新規不斉アリル化が可能となった。このAllyl-Transfer 反応による有用な光学活性天然物の直截的不斉合成法の確立を目的として、不斉炭素アリル化剤の新規製造法の開発を中心に研究を進めた。不斉炭素アリル化剤の調製には不斉ホモアリルアルコールの高純度光学活性体を収率よく合成することが必須である。従来法による調製を鋭意検討したが、一定した高い不斉収率で目的とする光学活性エポキシアルコールを得るに至らず満足できる結果が得られなかった。そこで近年開発された山本尚らによる光学活性エポキシアルコールの触媒的不斉合成(YH AE)を用いることとした。YH AEには触媒調製を要するが、含水反応条件(30%過酸化水素)で安定した高い化学収率と不斉収率が得られ不斉炭素アリル化剤の調製法を確立することができた。すなわち、YH AEで得た高純度光学活性エポキシアルコールに銅触媒存在下ビニルグリニヤ―試薬(CH2=CHMgCl)を反応させて種々の不斉炭素アリル化剤の前駆体である高純度光学活性ホモアリルアルコール(R2C(OH)C*H(CH2OH)CH=CH2)を調製した。このヒドロキシメチル基(CH2OH)の種々官能基を有するR'基への変換方法を確立し、不斉炭素アリル化剤(R2CH(OH)C*HR'CH=CH2)の調製法の開発に成功した。現在、本反応の実用性を証明すべく、当初目的とした生物活性天然物や新たに設定した有用天然物の直截的不斉合成を進めている。1年以内にそれらの合成を完成し本研究助成による成果を公表したい。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Heterocycles
巻: 89 ページ: 1427-1440
Molecules
巻: 19 ページ: 19021-19035