研究課題/領域番号 |
24550126
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山田 陽一 独立行政法人理化学研究所, グリーンナノ触媒研究チーム, 副チームリーダー (50317723)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 有機金属化学 / 触媒 / シリコン基板 |
研究概要 |
平成24年度において、ナノ空間が連続的に連結した反応空間の構築と、高分子と金属からボトムアップ的に形成される超分子金属錯体触媒との融合、すなわち、「ナノ構造・マイクロ構造と超分子化合物との高度ハイブリッド化」を実施した。ハイブリッド触媒システムの創製を目指し、緻密な最適化,基質一般性を確立することを目指し、シリコンウェハ表面上でのナノ空間・ナノ構造体の創製検討し、そのウェハに対して触媒創製ならびに有機変換反応を検討した。 平坦なシリコン基板に対し、銀化合物の存在下に過酸化水素とフッ化水素酸の混合物を作用させると、厚さ数マイクロメートルから数百ナノメートル程度のそれぞれ異なるシリコンナノ構造体が基板表面に形成された。これらをフッ化水素酸に浸漬することにより最表面を水素化終端し、引き続きPd(II)塩の水溶液に浸漬すると、シリコンナノ構造体の表面に固定化されたパラジウムナノ粒子が生成することを見出した。このようにして調製したシリコンナノ構造体―パラジウムナノ粒子複合体を、ヨードベンゼンとアクリル酸ブチルとのMizoroki-Heck反応の不均一系触媒として用いると、2,000,000の触媒回転数(TON)で反応が進行し、対応するケイ皮酸ブチルエステルを95%収率で与えた。この触媒は様々な基質に適用可能であり、対応するカップリング生成物を高い収率で与えることも見出した。 さらに本シリコン基板触媒は回収再利用が可能である。すなわち、反応終了後、本触媒をピンセットで回収し、同様のMizoroki-Heck反応に適用したところ、対応するカップリング生成物を高い収率で与えることが分かった。また反応混合物を、ICP-AESにてパラジウムの含有量を確認したところ検出限界以下であった。このことから、触媒からのパラジウム種のリーチングはほとんどないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した通り、平成24年度分研究計画・方法をおおむね達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載した触媒よりもさらに高活性な触媒を創成すべく、シリコン表面に金属触媒を担持した触媒の創製を行う。さらに、平成24年度での成果で述べたハイブリッド型触媒システムを集積化することで、ナノフロー型の反応システムの構築の検討を行うことも視野にいれている。具体的には修飾型シリコン基板と高分子金属触媒をハイブリッド化したものをパッキングし、これが効率的な有機変換反応を実現するナノ/マイクロ反応器となることを提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度後半に研究室の大掛かりな引っ越しがあり、次年度使用額が発生することになった。機器購入ならびにシリコン基板、マイクロリアクター(ガラス製)、有機金属試薬、有機合成試薬、スパッタ用高純度貴金属ターゲット、フローリアクター消耗品購入に充てる。
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