酸化的触媒反応の開発は、酸化を伴う官能基化を実現するための方法論として重要な研究課題である。本研究では、空気中に豊富に存在する酸素を酸化剤として用い、様々な酸化的反応を可能とする触媒系の構築を目指した。 最終年度は、これまでの2年間に見出したN-Boc-オキシインドール類のα-ヒドロキシル化反応 (C-O結合形成反応) で得られた知見をもとに、酸化的炭素-炭素 (C-C) 結合性形成反応の開発に焦点を当てた。本研究で鍵となったのは副生成物の構造解析である。即ち、上述のヒドロキシル化反応において、連続四置換炭素を有する二量体が生じていることが分かった。このことは、反応系中でラジカル種が生じていることを示唆する。この反応基質由来のラジカル種とスーパーオキシドが反応した場合には、C-O結合形成反応が進行すると考えられる。一方、我々は、スーパーオキシドを適切なラジカル受容体でトラップすると同時に活性化することで、ヘテロC-C結合形成反応が進行すると考えた。本作業仮説に基づき、1気圧の酸素雰囲気下、基質の探索を行った結果、N-Boc-オキシインドールとカテコールとのヘテロカップリング反応を開発することに成功した。本反応では、ホモカップリング生成物はほとんど生成することなく、高いカップリング選択性及び位置選択性が得られることが特徴である。また、様々な置換基を有するN-Boc-オキシインドール類およびカテコール類に対して有効である。更には、空気中でも同様のヘテロカップリング反応が進行することも見出すことができた。
|