硫酸化糖鎖は高い抗HIV、抗インフルエンザウイルス、抗デングウイルス作用など特異な生理活性を持つことを明らかにした。抗ウイルス作用は硫酸基に由来する(-)電荷がウイルス表皮タンパクのアルギニンやリジンなどのアミノ酸残基の(+)電荷間の静電的相互作用よると推定した。本基盤研究では、表面プラスモン共鳴(SPR)を用いて硫酸化糖鎖とウイルスモデルペプチドやポリリジンとの相互作用を定量的に解析した。 ビオチン化したオリゴペプチドをSAセンサーチップに固定化した。硫酸化糖鎖はHBS-EPランニングバッファーに溶かし調製し、最大濃度5 μg/ml,流速30 μl/min,添加時間180 sec、解離時間は600 secで分析を行った。センサーチップは50 mM NaOHで再生した。 天然糖鎖ガラクトマンナンを硫酸化し高い抗HIV作用を持つことを明らかにした。抗ウイルスメカニズムを定量的に解明するため、HIVの表皮タンパク質gp120の塩基配列中の比較的塩基性アミノ酸が多い2つの領域、493(Pro)~511(Arg)、297(Thr)~316(Ala)のオリゴペプチドPLGVAPTKAKRRVVQREKR、TRPNNNTRKRIRIQRGPGRAを合成しセンサーチップ上に固定化した。そこに硫酸化ガラクトマンナン溶液を添加しSPRを測定し、見掛けの結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、解離定数(KD)を求めた。硫酸化糖鎖はオリゴペプチドと10の5乗オーダーの強い結合力を示すことを見出した。一旦結合すると解離せず10の-4乗の低い解離定数を示した。従って結合定数は10の-9乗オーダーとなり、大きな相互作用を示すことが分かった。この結果、硫酸化糖鎖はウイルスと静電的相互作用によって抗ウイルス性が発現すると考えた。
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