研究課題/領域番号 |
24550130
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
福元 博基 茨城大学, 工学部, 准教授 (70313369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | π共役高分子 |
研究概要 |
本研究では、新たな電子・光機能材料の創製を目的として、(1)ポリエンのπ電子系をスペーサー、レドックス活性な遷移金属のd電子系をアンカーとする新たな有機π共役-遷移金属複合系の構築、(2)構築した複合系の基本的な化学的性質を明らかにし、機能材料開発へ展開するための評価について順次行う予定である。 24年度では、骨格となるポリエン誘導体、Ar-(CH=CH)n-Ar(n = 2 - 6)の合成に着手した。まず、ポリエン骨格として比較的合成しやすいテトラエン(n=4)を、両末端に導入する金属を固定するためのユニットとして、ビピリジン(bpy)を選択し、合成を行った。予備的実験でこの誘導体の合成に成功したが、有機π共役-遷移金属複合系の構築に必要な十分量は得られなかったため、現在は大量合成を行っている。並行して、導入する金属種として、溶解性の高いCp*(ペンタメチルシクロペンタジエニル)基が結合したRu(II)錯体の合成も行った。 スペーサーとして長いポリエンだけではなく、全てフッ素に置き換えた環状オレフィン、シクロオクタフルオロペンテン(OFCP)に着目し、OFCPにレドックス活性なフェロセンをアンカーとして導入した新たな複合系の構築についても検討を行った。tBuLi存在下、2当量のフェロセンをOFCPに作用させるとOFCPにフェロセニル基が二つ導入された複合系錯体が得られ、X線結晶構造解析により、二つのフェロセニル基がOFCPの二重結合を介して共役系を形成していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度では、スペーサーとなるポリエン誘導体の合成を行うことを当初の目的とした。特に24年度は研究代表者が現職に異動したばかりで、研究体制を一から構築するところから始めたことを考えると、大量合成までには至らなかったものの、最低でも着実に合成ルートを開拓した点において、おおむね順調に進展していると判断している。本研究の最終目標が新たな有機π共役-遷移金属複合系の構築であるため、スペーサーの種類にこだわることはない。合成期間の短縮化を図ることを目指し、上記ポリエン誘導体とは異なり合成不要な含フッ素環状オレフィンを用いることで、新たな有機π共役-遷移金属(鉄(II))複合系の構築に到達できた。当初の計画とは少し異なるが、結果として最終目標に少しではあるが近づけたことからも、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、本研究の応募申請書ならびに交付申請書に従って研究を遂行する。具体的には上述したとおり、ポリエン誘導体の大量合成とルテニウム(II)などの遷移金属錯体との反応を早急に行い、種々の有機π共役-遷移金属複合系の構築を行う予定である。また、含フッ素環状オレフィンをスペーサーとした鉄(II)複合系については、祭クリックボルタンメトリー、UVスペクトルなどの測定を行い、電気化学的応答、エレクトロクロミズムなど電子・光機能材料に求められる機能特性についても明らかにする
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的には、合成用試薬(有機合成、錯体合成)、ガラス器具、不活性ボンベ、電気化学的測定用の電極、ITO基板などの消耗品と研究成果発表を行うための学会参加に係る旅費に当該研究費を充てる予定である。また、研究成果がまとまれば、専門雑誌への投稿も予定しているが、投稿に関する費用もこの研究費からねん出する予定である。
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