研究課題/領域番号 |
24550131
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
早川 晃鏡 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (60357803)
|
キーワード | ナノパターン / ブロック共重合体 / 階層構造 / シルセスキオキサン / 方形 / 微細加工 / 自己組織化 |
研究概要 |
半導体デバイス作製に必要不可欠な微細加工技術として、次世代にはより高解像度、省エネルキー、安価となる新しい技術の確立が求められている。本研究はポリマーの自己組織化構造を微細加工に用いるボトムアップ型微細加工技術を対象に、超微細パターンの創成に向けた新規材料の開発と自己組織化に関する基礎的技術の確立を目的とした基盤研究である。本研究者が新規に材料開発を行ったかご形シルセスキオキサン(POSS)含有高分子ブロック共重合体(PMAPOSS含有ブロック共重合体)のミクロ相分離構造等に関する未だ明らかにされていない基礎研究を完成させ、PMAPOSS含有ブロック共重合体の階層構造を利用した方形状超微細ナノパターンの創成に向けた研究基盤を確立することを目的としている。 本年度25年度は、PMAPOSS含有ブロック共重合体(PMMA-b-PMAPOSS)が自己組織化構造を形成する分子量の限界値とPMMA成分が点状構造となる最小周期長について小角X線散乱装置および原子間力顕微鏡を用いて明らかにした。さらに、PMMA成分による点状構造以外の自己組織化構造の形成について調べたところ、興味深いことに剛直な分子鎖であるPMAPOSS成分による規則的な点状、線状構造の形成は容易でないことが明らかとなった。また、最小周期長を明らかにする過程において、熱アニーリングと溶媒アニーリングの構造形成における影響についても興味深い知見が得られた。一方、ブロック共重合体の階層構造を利用した方形状超微細ナノパターンの創成については、新規に合成したブロック共重合体を用い、自己組織化構造の形成を試みた。熱アニーリングを施すことによりブロック共重合体によるミクロ相分離構造と側鎖分子による液晶構造が組み合わさった階層構造の形成がX線構造解析により見受けられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目を迎えた本年度25年度は、当初の計画通り進捗していることに加え、アニーリングによる構造制御において興味深い結果を得ることを特筆できる。以下に簡潔に達成された内容をまとめる。 (1) PMAPOSS含有ブロック共重合体(PMMA-b-PMAPOSS)が形成するミクロ相分離構造の最小周期長(点状構造)について組成比をPMMA:PMAPOSS=80:20におおよそ固定した上で、分子量を低下させることによって明らかにすることに成功した。バルク試料では薄膜よりもより明確なミクロ相分離構造の形成が見られ、周期長も短くなることがわかった。現在のところ、PMMAの球状および点状構造間距離はバルクと薄膜でそれぞれ7nmおよび8.9nmに至ることがわかった。その一方で、組成比の微妙な違いが周期長に影響を与えることがわかってきた。微細構造の転写材料としての開発においては重要な知見となるため、引き続き詳細について検討することとした。また構造制御において分子量の低い試料(数平均分子量:1万程度)では熱アニーリングが有効であり、分子量のより高い試料(数平均分子量:3万程度)では溶媒アニーリングがより有効であるという分子量依存性に関わる興味深い知見を得ることができた。 (2)階層構造を利用した方形状超微細ナノパターンの創成として、前年度に引き続き、新規ブロック共重合体PMAPOSS-b-PMAC66MSi3の合成に取り組み、分子量の異なる目的物を得ることに成功した。バルク試料を調製した後に、小角および広角X線解析によって階層構造の形成について調べたところ、ラメラ状ミクロ相分離構造の形成に加え、側鎖分子の自己集合によるスメクチック相の形成がみられ、目的とするラメラ-within-ラメラ構造を得ることに成功した。 以上のことから、本研究の目的に対する現在までの達成度は計画の範疇で順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は、前年度までに得られた階層構造を利用した方形状超微細ナノパターンの創成において酸素プラズマエッチングによる方形状の微細凹凸パターン形成に取り組み、本研究の目的達成に鋭意努める。PMAPOSS-b-PMAC66MSi3の薄膜における配向構造制御について、基板上に適切な下地剤の塗布を含めて検討を行う。自己組織化構造の解析については、原子間力顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察等を用いて行う。本研究の実験結果をもとに、微細パターン形成について多面的な知見を集約しその可能性についてまとめたいと考えている。
|