研究課題/領域番号 |
24550133
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
猪股 克弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80232578)
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キーワード | ポリペプチド / ゲル / 液晶 / 形状変化 / 刺激応答 / ヘリックス-コイル転移 / 階層構造 |
研究概要 |
本研究では、α-ヘリックス構造の棒状ポリペプチド鎖が一軸的に配向した液晶ゲルにおいて、ポリペプチド鎖のコンホメーションがヘリックス構造からランダムコイルに転移することで起こる、ゲルのマクロな異方的形状変化の挙動を、階層的構造を念頭に明らかにすることを目的としている。一軸配向ポリペプチド液晶ゲルの成分鎖のコンホメーション変化とゲルの形状変化の相関性について検討を行ってきた。平成25年度は、以下の2種類の試料系について研究を行った。 (1) 温度応答性ポリペプチド液晶ゲルの異方的膨潤-収縮挙動 水溶液中で高温ではランダムコイル、低温ではヘリックス構造を取るポリペプチド(PHPePG)を用いて、一軸配向ゲルを調製した。これらの試料でも、温度変化に伴い分子鎖配向方向と垂直方向とで異方的な膨潤・収縮挙動を示した。またPHPePGは、高温で脱水和により溶解性が低下し相分離する。これにより、昇温とともに分子鎖配向方向には収縮、垂直方向には膨潤していたゲルが、相分離温度を境に両方向ともに収縮する、複雑な形状変化を示すことが分かった。 (2) ポリペプチド液晶ゲルにおける液晶相の崩壊が膨潤挙動へ与える影響 低温では液晶相、高温では等方相となるようなポリペプチド濃度のリオトロピック液晶溶液を調製し、それぞれ架橋させることで、同じ濃度で液晶性を示すゲルと示さないゲルとを調製した。コンホメーション転移の際の膨潤度の変化を詳細に比較した結果、液晶性を示すゲルでは、示さないゲルよりも、膨潤度の変化が急激に起こる領域があることが分かった。これは前者では、分子鎖の剛直性の低下による液晶相から等方相への転移が、コンホメーション変化に付随して起こっていることを意味しており、棒状鎖が凝集し液晶相を形成する階層構造が形成されている本系で特徴的に見られる現象であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、様々なポリペプチド液晶ゲルの調製とその形状変化挙動における階層構造の解明を、研究の目的と設定した。平成25年度は、ポリペプチドのヘリックス-コイル転移によるゲルの形状変化と、分子鎖の疎水化によるコイル-グロビュール転移がカップリングすることで、複雑な形状変化挙動を示すことを明らかにした。また、構造変化が階層的に影響を及ぼす現象を、液晶相を示すゲルと示さないゲルとを比較することにより、見出すことができた。以上の成果が得られたことから、本研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、前年度で検討した、液晶相を示すゲルと示さないゲルとの比較を、より詳細に行っていく。これらのゲルが、ポリペプチド鎖のコンホメーションに伴いどのように形状が変化するかを調べる。単なる分子鎖の形態の変化を反映したゲル形状の変化なのか、あるいは、剛直性の低下による液晶相から等方相への転移がカップリングしたゲル形状の変化なのか、について明らかにすることで、ゲルの形状変化と構造の階層性との関係についての知見を得る。 また、コンホメーション変化に伴ってゲルが配向方向に膨潤-収縮を可逆的に繰り返すことを利用して、試料長が可逆的に変化するような繊維状試料の調製を行う。具体的には、ポリペプチドのリオトロピック液晶溶液をせん断配向させ、その状態でゲル化を行うことで、繊維方向に分子鎖が配向したポリペプチドゲル繊維を調製する。膨潤溶媒や温度を変えることで繊維長が可逆的に大きく変化する現象を利用した、機能性繊維としての利用の可能性を検討する。
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